第23話 余計なものを拾ってしまったのかもしれない
声のした場所は、それまでとは全く違う間所だった。
かなり広い空間で、正面には境界線のように並ぶ大量の柱。まるでギリシャの神殿のようだ。
中には相当数の人間がいる事は確認できたが、それ以前に柱の前にも結構な数の兵隊が立っている。
警戒の厳重さからして、何かの拠点といったところか。
全員鎧を身に
鎧は全て共通のもので統一され、野良の集団とは思えない。
そういやあの鎧、幾つも見たな。食われていた死体も全部、あの鎧だっけ。
こうやって生きて動いている人間があんな格好をしていると、まさにファンタジーという感じがするね。
奥には多数の木箱や見た事の無い機械なんかも置かれている。
もしかしたら武器や鎧を回収したのは彼らかな? だとしたら逆に安心できる。
ただ数は百人はいるだろう。絶対に勝てるわけがない。喧嘩なんかしたくないものだ。
俺が近づくと、兵士達の目が驚愕に見開かれた。
まあ、下から召喚者が来れば驚くだろう。なんだかわけの分からない言葉で叫んでいるが、意味は通じない。
だけど歓迎されていない事は明らかだ。槍を構え、目を血走らせ、怒声と言って良い勢いで叫んでいるのだから。
そして武器を構えたまま、じりじりと囲み始める。
なあ、俺なんかしたか?
だが思い出してみれば、勇者は召喚者の事を快く思っていない感じがあった。
そう考えれば、部下のこの態度も多少は納得できる。
取り敢えず両手を上げて、フレンドリーに接するしか無いな。
「オッケーオッケー、何を警戒しているのかは知らないけど、俺はこの通り一人だし敵意も無い。ここは武器を収めてくれないか? 上へ戻りたいだけなんだ」
「★□※※!」
「◇○ □※●!」
だめだ、通じやしない。それどころかどう見ても殺気立っている。
いやもうそんな次元じゃないな。いつ襲い掛かろうか、そういったタイミングを計っている様子だ。
現地人ってのは、こんなに好戦的なのか?
だけどそれにしたって、召喚したのはお前らの同類だろうに。
「そいつらは、あんたが勇者ホルメス様を殺して装備を奪ったんだって言っているのさ」
もういつ戦いが始まってもおかしくない。そんな時、人込みを割って一人の男性が現れた。
言葉が通じる! 助かった!
「それは誤解だ。勇者はなんか黒い竜と相打ちになっていた。俺は装備が無かったから借りたが、地上に戻れたら遺族に還すつもりだったんだよ。言葉が通じるなら、そう説明してくれ」
「☆※○※ □□▲※」
「□★☆☆○ □※●!」
これで何とかなるかもしれない。
通訳してくれている男性は、170後半くらいの身長だろうか。俺とほぼ変わらない。
だけど肩幅が違う。恵まれた体格だ。
黒髪に黒い眼は、おそらく俺と同じ日本人。召喚者ってやつだ。言葉も流暢だったしな。
だけど歳は俺よりもずっと上だろう。顔つきは普通だが眼光は鋭く、無精髭を生やしている。
上半身は肩まで覆う強固な金属鎧。腰も手足も装備している。関節部は
武器は腰に下げた長剣に、左手に
色合いは飾りっ気のない銅色だが、かなり使い込まれている様子が分かる。
多分だけど、結構長くこの地にいる人なんじゃないだろうか?
よく見たら胸元に三角に
更にそれは、後ろにいた女性の鎧にも刻まれていた。
彼と同じ色の長い黒髪。僅かに
身長は170よりは下くらいか。バストはドンとデカく、谷間が眩しい。
その上からは軽めの
鎧の下はローブのようなぶかぶかのワンピースだけど、裾から鎖鎧が見えている。こちらもかなりの重武装だな。
見た目に武器を持っているように見えないが、意味は無いだろう。この世界にはスキルなんて言う未知の武器があるのだから。
「勇者様が竜に倒されるわけがない。我らの英雄を愚弄するなだそうだ」
いや、実際倒されていたし。というより――、
「俺が竜より強そうに見えるのか? 竜が勝てない相手なら、俺に勝てるわけが無いだろう」
「※□□※ ○※■」
「▲▽ ■※□□◆」
また翻訳が始まった。不便だけど、仕方が無い。
ここは彼が説得してくれることに期待しよう。
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