『ビブラート』

彼は地味で大人しく、口数が少ない。

目立たないから皆気付かないのかもしれない。

「おはよう。晴れたね」

ありきたりな一言。

静かに平坦に綴られるその声音は、天上のビブラートのように私の心を震わせる。

擽られて甘美な疼きを秘めた胸を、そっと押さえて宥め、今日も素知らぬ振りで言葉を探す。

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つまりは、イケボというやつですな。

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