第195話 THE

 リンネのHPは0になった。

 12歳から今日までの4年間、ほぼずっと一緒に過ごして来た彼女は、今日死んだ。

 僕の裏切りのせいで。



 私はHPが0になった。

 死んだ。

 否、死んだように見せかけているだけだ。

 ラストダンジョンでの戦いの中で、身に付けたスキル『仮死カシ』。

 HPを0に見せかけて死んだように見せかける。

 私はクナイを喉に突き刺し、自殺した様に見せ掛けた。

 倒れたままの私は、エリスを狙っていた。

 ユウタと向かい合っている彼女を殺す。



「ユウタ、これで完璧ね」


 エリスが辺りを見渡して、そう言った。

 完璧?

 一体、何が完璧だというのか?


「あとは、あのエルフだけど……見当たらないわね。まったく、一番騒いでたくせに、殺されると分かったら逃げ出したのね」


 ああ、そうだ。

 僕が皆を殺した。

 だから、僕とエリスの未来を邪魔する者はいなくなった。

 だから、彼女は完璧だと言ったのか。

 それにしても、フィナが逃げた。

 僕を救世主に目覚めさせ、僕を愛してくれたフィナが僕を捨てた。


「ははは! そうだね!」


 僕は声を上げて笑った。

 フィナは僕に愛想を尽かせたんだ。

 気付いたら僕を慕い、集まって来てくれた者は、皆、死んだ。


「あはははは! 僕はエリスと一緒に居られて幸せだよ!」


 僕は自分自身に対して笑ってしまった。

 まったく、最低の存在だ。


「あ、最後にもう一人、邪魔者がいたわ」


 エリスが思い出したかの様に手を叩く。


「え? 誰?」


 僕は辺りを見渡した。


「誰もいないよ」

「いるわよ」

「え?」

「あなたよ」



 一緒にどこか遠くへ逃げよう。

 そう誓った夜、彼女に裏切られた。



 ユウタは、私と出会ったあの夜と同じ様に、エリスに裏切られていた。

 あの時と全く同じだった。



「私にとり込まれることで、私達は永遠に一緒になれるの」

「エ……エリス……」


 彼女の頭が二つに割れ、中から触手が飛び出して来た。


つづく

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