第160話 次の世界であいましょう

「うわー、綺麗!」


 フィナの目の前には大きな滝と、そこにアーチの様に現れた虹があった。


「虹の先の端っこには一体何があるんだろうね?」

「さぁ……」


 こんな時、気の利いたことを言えない僕は、男としてダメだなあ。


「綺麗な靴で歩いてみたいなあ」


 僕とフィナは一旦、ラストダンジョンを出た。

 皆の粋な計らいで一日だけ外出を許してもらえた。

 アスミだけは時間を気にして、何度も早く戻って来いと念を押して来た。

 だけど、マリアンがこう言ってくれた。


「私達だけで先に進んでおくから、ゆっくりどうぞ」


 つまり、僕とフィナ、二人で過ごしてくれている間、残った皆でラストダンジョンの攻略を進めてくれるそうだ。

 ボスモンスターの難易度が下がっているとはいえ、大変な戦いにはなるだろう。

 今頃、どの段で戦っているのか?

 ラストダンジョンには特殊な結界があるらしく、通信が出来ないから分からない。

 魔王を倒して早くゲームをクリアさせたいなら、そういった結界も無効にする様に世界更新アップデートをすればいいのに。

 僕は運営側の中途半端な対応に腹が立った。

 そのくせ、ギルド内でしか組めなかったパーティは、ギルドを越えて組めるようになった。

 ダンジョン内にいる皆は、それぞれバラバラのギルドだった。

 今回の世界更新アップデートで、リンネ、ガイア、マリアンはギルドの垣根を越えて同じパーティとして戦うことが出来る様になった。

 これで良かったんだ。

 僕はそう思った。

 不意に周りが暗くなる。

 頭上をグリフォンが通り過ぎていた。


「おーい! ここだよ!」


 僕はありったけの大声を上げ、手を振った。

 グリフォンは旋回し、僕らの元に戻って来た。


「おお! 豆粒みたいに小さかったから分からなかったぞ!」


 調教師テイマーのゴリッチュが僕らをグリフォンに乗せてくれた。

 何故、彼を呼んだのか。


「ユウタ、最後に辺境に行こう!」


 フィナがそう言うので、僕は彼を呼び寄せた。


「ネスコも待ってるぞ」


 ゴリッチュがそう言う。

 彼もNPCなのでゲームがクリアされたら消えるのだろう。


「俺達の役目もそろそろ終わりだな」


 それを彼も分かっているのだろう。


「ゴリッチュも地球ちきゅうに転生出来たらいいのに」


 僕は叶いもしない願いを呟いた。


「ユウタ。俺達はまたどこかで会えるよ」

「え?」

「それは新しいゲームの中かもしれないし、もっとリアルな世界で、かもしれない」


 どういうことだ?

 だけど、すごく希望が持てる言葉だった。


「フィナも?」

「うん。そうだよ」


つづく

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