127. 翔子と帰省許可
「本日の作戦は終了しました。待機、ありがとうございます!」
副長さんがやってきて智沙さんが対応中。そういえば、智沙さんのお父さん、今日も一昨日も見てないけどどうしたんだろ。
「土壁で塞いである箇所はスルーしたようだが?」
「どの箇所のことか把握しかねます。……が、赤外線センサーを張っておりますので、何かあった場合も検知が可能かと」
「……なるほど。了解した」
結局、あの後もスルーだったのが気になってたので質問してもらったけど「そんな場所はない。いいね?」ってことですか。でもまあ、監視はしてくれるって感じかな。
「では、失礼します!」
敬礼して去っていく副長さん。ご苦労様です。
「では、我々は先に撤収しようか」
「「「はーい」」」
「ワフッ!」
持って帰るのは古代魔導具だけ。一昨日と同じで排水装置は置きっぱにするらしい。
「おみやげ買って帰ったほうがいいかな?」
「どうだろ。一応、仕事だし……」
「終わったことだしいいだろう。時間的にゆっくりはできないが、ルナリア殿とマルリー殿はあそこの紅茶ソフトは食べていないしな」
おっと、智沙さんからオッケーが出たのなら問題なし。
「いいねえ。あれもルナリア様好きそうだよね」
「っていうか、ルナリア様、甘味も結構渋めなのが好きですよね。抹茶アイスとかも好きだし」
「純粋に果物の甘さに近いのが好きなフェリア様と、ちょっと捻った甘さが好きなルナリア様って考えると『らしい』って思わない?」
あー。でもこれ、本人に言ったら絶対に怒られるやつだ……
***
六条邸に戻って、いつも通りの報告会。智沙さんが報告してくれるんだけど、今回は本当に見てるだけーだったので特には。例のなかったことになった場所のことぐらい?
「まあ、表向きにもなかったことにしたいって話だ。あんまり突っ込んでやるなよ?」
「はい」
大人の対応をしましょうってことで報告会は終了。で、ちょっとお願いというか、さすがにこっちにいる期間が長くなりすぎてる気がする。そのうち一週間ほどは異世界にいたけど。
「えっと、そろそろ一度実家に帰っていいですか? 伯母も心配してると思うので」
「おう、また呼ぶことになるかもだが、元気な顔を見せてやってくれ」
「ありがとうございます」
で、問題はルナリア様、マルリーさん、サーラさんなんだけど。
「で、お客が来てるし、智沙と美琴も行っていいか?」
「はい、もちろん。助かります」
良かったー。二人がいないとまずどうやって移動すればって話になるんだよね。転移魔法陣を使うにもチョコも加えて四人はキツいんだよね。そうなると、やっぱり車を出してもらうしかなくて……
「埼玉の方はもう大丈夫なんでしょうか? また呼び出しが掛かったりは?」
「設置したセンサーでしばらくは様子見が続くだろう」
UGVでマップが全部埋まって、結局、入口はあの場所しかないこともわかった。なので、あそこさえ監視できてれば、あとはたまたま入れ違って遭遇しなかったっていうパターンさえなければ何だよね。
「その後はどうなるんでしょう?」
「埋めた方がいいだろって話はしといた」
と館長さん。廃坑なだけで、他に何の珍しいものもないしね。スケルトンたちが持ってたツルハシぐらいかな? それもまあ廃棄されるんだろうけど。
「事件があった以上、県警の捜査、現場検証が行われるだろうが、陸自が荒らした後だしな。何か出てくるということもないだろう」
「ま、何か出ても無かったことになるけどな」
「「あー……」」
なんかもうこれ以上突っ込まれないように、今さらその話を蒸し返したりはしないよね。亡くなった人や家族はやりきれないかもだけど……
***
「というわけで、しばらく私の実家に行くことになりましたけど、いいです?」
「ええ、いいわよ」
あっさりオッケーされました。マルリーさん、サーラさんも異論なし。というか、
「さーびすえりあにまた行ける?」
「ええ、休み休み行かないと大変ですし」
その答えに喜ぶサーラさん。で、ルナリア様やマルリーさんにいろいろ説明してくれる。
「翔子。途中の全てのさーびすえりあに立ち寄りましょう」
「いやいや、そんなことしてたら一日で帰れないですから!」
これだからお嬢様はもう。とりあえず、おいしいものがあるサービスエリアには立ち寄るということで了解してもらうことに。
「あと館長から、キャンプ場の様子も見てくるようにと言われてます。金鉱床を石壁で塞いでもらいましたが、それをもう一度確認して欲しいと」
「あー、あそこってどうするんです?」
「魔素があると金脈が再生するかもしれないという話でしたので、魔導具で魔素を消しておいてくれと」
「「デスヨネー」」
となると、魔導具は持っていかないとかな。
「金鉱床がこちらの世界に転移してきたというの?」
「はい。サーラさんの話だと、どこかのダンジョンの一部なんじゃって話なんですけど」
夏休みにフェリア様が遊びに来てた間に何があったかをざっくり説明。あそこを見つけられたのは、ヨミとフェリア様のおかげかな?
「そんなことがあったんですねー」
「マルリーはどこのダンジョンか思い当たったりしない? 場所的にはラシャードあたりだと思うけど」
「さっぱりですねー。ラシャードならケイの方が詳しいでしょうしー」
白銀の乙女たち二人がそんなことを会話してるけど、ラシャードってどこ? あ、ケイさんがギルマスしてるところだっけ? もうちょっとちゃんと地図見とけば良かったかな。一応、カスタマーサポートさんには伝えたので、向こうでの場所は特定してくれてるはず。
「少し疑問に思っていたのだけれど、今回の転移は転移先に何かある場合でも発動してるわね。普通はそういう場合は魔法が発動しないのだけど」
「へー、そうなんですね。って当然か。転移先に物があって衝突したりしたら……あれ? でも、普通に空気がある場所には転移とか転送できてるし……」
何かの法則があって『気体なら押しのけられるから大丈夫』とかあるのかな? ん? 逆は?
「アイリスフィア側って、転移しちゃった跡はどうなってるんです?」
とチョコ。元あった場所は空洞になっちゃってる?
「壁ができて埋まってたそうですよー」
マルリーさんが答えてくれる。ということは、向こうから来たというよりは……
「今回の場合は『転移』というよりも『転換』という方が正しいのかしらね」
「場所そのものが入れ替わったって考える方が自然ですよね」
神樹の下、第十階層のカオスな状況って空間の入れ替えがうまく行ってないのかな? カスタマーサポートさん——『空の賢者』ミシャ様はどうするつもりなんだろ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます