第3章 2011年 その6 終のすみか
「余震に遇いつつ終の住処か」
その一瞬 予期せぬことの起こりしが『日本沈没』にすでに予期あり
無謀にも東京湾を跨ぐ橋 風に煽られバスは堪へつつ
舟を降り東京湾の底に立ち働く人ら 潮の引く間を
なぜか良き ガラスの家はしつくりと隅々までも惜しも我が家
見比ぶるきうりや茄子の花の色 手抜きなきこと葉も怜悧なる
庭に生ふる柔きイネ科を踏みて舞ふ ひとり稽古に蚊もくる夕べ ==太極拳
借景の桃や柿の葉 いちぢくは白き我が家を品よく仕立つ
南瓜の葉の笑ふほど大きくて これに負けずと花真つ黄色
「愛のわけ」
ひとときを母と過ごせる帰るさの暮るる坂道 父さんと呼ぶ
昼寝より目覚めし孫は枕つかみ即片付けぬ 園のしつけか
見渡すに子ら健やかに 設計図違はずのびて水瓜を齧る
孫一歳また遊ぼうね我が言へば こつくりしてみせ見返りて行く
この愛の
集ひ来て 交はし合ふ声こだまして駅舎に高く明るく響く
理不尽に砕かれて往く日々のこと 子らは嘆かず母を巣立てば
「今昔」
阿蘇の野に若きら座して他愛なきじやんけん遊び ふと思ひ出づ
才長けし吾なりしにと悔いゐるが これぞ非才の証しなるべし
浮かれ唄眺むるばかり 視聴者の一生も僅かそこそこ気楽
戸も開けず籠るふたりに細々とたつきの柱 個人年金
ブランドの腕時計もう用無しと ソーラー電池を要に動く
「飽くなし、飽きもせず」
自が生の底汲み尽くす貪欲を 飽くなき希求
何首まで呟き漏らす 夫
しんみりと散らし書きする独り居の 夜半に欲しかる美声のメロディ
独り寝の淋しくもなき身の内の唯 真実の美しきを請ふ
飽きもせず苦労あるもの しみの浮く手に柿の
寝足りしか 脳のやる気にわが赤き
==ハイビスカス
けふは夏至 希望の坂を登りつめ明日はとぼとぼ冬至へ向かふ
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