第8話

 あれからアーシャと2年ほど旅をして街に寄ればまず教会や治療院を探し、患者が居れば傷や病を癒したり、医療技術を広めたりしていた。


 治療に関しては私が加わった為、治療速度が倍になったそうだ。

 何倍かは知らない。


 なんと言うか、まあ私、居るだけで周りの人の怪我とか病気、治るらしいので。


 相変わらず私がそれを何故出来るのか理由も理論もさっぱり分からないのが恐ろしい。


 まさか私の命削ってませんよね?


 ね?



「アーシャ。次は何方に向かいますの?」


 本来なら大体3ヶ月から半年程、街に滞在して切りが良い状態で次の街を目指すのが通例だったそうなのだけれど、私が合流したせいで目立つ事、目立つ事。


 なので名前売りは一切無しの契約で付き人にして頂きました。


 アーシャは恥ずかしがり屋さんなのでしょうか?

 どの街に行っても自分が星巫女である事は一切語りません。


 何処に行っても医療と治療法を教え歩いては次の街へと旅立ちます。

 まあ私は何をしているかと言えばただ隣に立ってるだけなんだけど…



 この街にもそんな感じで来たのですが着いて2週間足らずで唐突に明日、街を出ますとアーシャに宣言されてしまった。



 せっかくこの街で見つけたティラミスの美味しい喫茶店に嵌って足繁く通っていたのにもう終わりとはとても名残惜しい。

 だけど私の使命はアーシャの傍に侍る事なのだ。



 アーシャがこうと言えばそれに従うのが私の役目である。



 でなければ私は直ぐにでも追い返されて国の都合で嫁に行かされる一択なのでどうしようも無い。


 悲しいけれど、これ現実なのよね。



「アウロザーデンに向かいます」



「…は?アウロザーデンですか?でも彼処って今、タハリカ共和国に宣戦布告したって噂が…」


「だからです。阿呆な争いで無辜の民の命を死に晒す等、この星の管理者として許せる行為ではありません」



 私はアーシャとのこの1年の旅路ですっかり忘れていたのだけれど、そう言えばこの方、星巫女様でした。


 ずっと聖女の様な治療行為を2人でやってたものだからすっかり頭から飛んでおりました。




 今更ながら星巫女様とはこの惑星ハルナの星の管理者だ。



 星神ハルナ様と共に何時もこの星が人類にとって過ごしやすく安寧をもたらす為に星の循環環境を管理しておられる。



 なので、この星では何処に住んでいても程よい気候と豊かな土地に溢れ誰一人飢えと言うものを体験する事は本来なら無いのだという。



 しかし、己の欲望を抑えきれずに他者の人生に介入する者は後を絶たず、権力者として伸し上がったりより多くの物を手にする為に奪ったりする事は過去においても日常茶飯事だったりするのだ。



 ただ、星巫女様は全てを網羅出来ないので戦争等の大きな争い事で星が汚される場合のみ介入する事があると歴史で学んだ。


 ここ300年は小さな小競り合い程度しかなかったらしいのだけど、今回は違うということだろう。



 なので今回は大きな戦争になる…そう言う事なのだろう。

 星巫女様も大変である。



 ……あれ?それって私も巻き込まれるの?



 私は慌てた。

 何せ、今まで大きな戦争はお爺様の時代でも起きなかったのだ。


 だからずっとこれからも安全で楽しく快適で自由な旅路をアーシャと出来ると考えてたのだ。




「えーと、私ついて行って足でまといになりませんか?」



 いくら従者でも戦争のど真ん中に一緒に武力介入するのはちょっと命が幾つあっても足りないだろう。


 私はガン●ムなんて持っていないのだ。

 武力介入等できるわけが無い。


 そう思っての提案だったのだけれど…



「大丈夫よ。アリスなら何も問題無いってハルナも言ってる」



 速攻で却下された。



「え?どこら辺で私、問題無い判定されたの?」



 星神様は私の何を大丈夫とか言っちゃってるのだろう?



 因みに私、未だに自分の能力良く理解してませんけど!?



 私1人考えが置いてけぼりにされつつも兎に角、強制連行させられるらしい事だけは理解した。



 うう、これならまだ幼児王子と婚約してた方がマシだったんじゃないだろうか?




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