第497話 焼きプリン
マリは俺の屋敷の離れに住むことになった。
一歩たりとも部屋の外に出ることがないので、婚約者と間違われることはないが、俺が声をかけないと食事さえ忘れてる時があるので、なるべくの頻度で顔を出している。
別にここの食事が嫌なわけでないようだ。
美味しいとお代わりもするし、好き嫌いもきちんとある。
だが、それ以上に最高の暇つぶしが効果てきめん過ぎたのだろう。
勧めておいてなんだが、早まったか?
まあ、何ないよりは健全でいいのかもしれない。
「これ、すごく美味しいね」
そんなマリが一番気に入ったのが焼きプリンだった。
俺の身内には何度か振る舞ってはいるが、外にはほとんど出回ってない焼きプリンをマリはこよなく愛した。
具体てには、顔を出す度におやつや食後のデザートとしてねだってくるくらい。
むしろ普通の食事も全て焼きプリンでいいと。
……何か変なものでも混ぜ込んだのだろうか?
そんなことを疑うくらいには焼きプリン中毒になっていた。
焼きプリンは俺も好きだし、婚約者達も好きだが、普通のプリン派がこれまで周りには多かったのでここまで熱狂的な焼きプリン派は初めてだ。
「この絶妙な舌触りがいいんだ」
焼いた部分のことだろうか?
俺も好きだけど、病的な目で語るほどでは無いので聞き流しておく。
そんな風に日々焼きプリンに侵食されていくマリだったが、ある日初めて部屋の外に出たのがこれまた焼きプリンのためだった。
「焼きプリンの匂いがしたからつい……」
だからといって、能力をフル活用して厨房に入ってくるのはやめた方がいいと注意はしておく。
俺はともかく、他の屋敷の人達は驚くから。
マリが部屋から出たのはその一度きり。
本当にその時だけで、それ以外でマリはマジで外に出ることはなかった。
多分、最高の暇つぶしたるゲームのルールをまだ一割も把握できてないから覚えるだけで時間が過ぎているはずなのだが、それも最高の暇つぶしになっているのだろう。
ゲーム七割、焼きプリン三割というところか。
とりあえず毎日作り置きをする事にはしているが、甘やかし過ぎるのも良くないのできちんとすることはしておく。
焼きプリンはおやつか食後のデザートだけと。
……まだ甘いかな?でも、焼きプリンだけしか食べなくなっても困るし、何より焼きプリンを欲するマリを見て、妖精のミルが久しぶりに焼きプリンを所望するようになったので悪いことばかりではない。
「やっぱりこれも美味しいですね〜」
のほほんとマイペースに食べる妖精さんの姿は和むので悪くない。
マリも美味しそうに食べてくれるんだけど、焼きプリンを病的な目で見てるのでこうしてのほほんと食べるミルを見てる方が落ち着くのかも。
何にしても、新しい同居人は悪いことばかりじゃないので良かったよ。
こういう縁も大切にしないとね。
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