第496話 最高の暇つぶし
「レグルス兄様」
こっそりと、呼ぶと顔を寄せてくれる兄様。
「なんだい?」
「この件、俺に任せて貰えませんか?」
「うん、勿論だよ。でも大丈夫かい?」
頷きつつも、チラリとマリを見ながらそう尋ねてくるレグルス兄様に俺はしっかりと頷く。
「大丈夫です。何かあっても俺が何とかするので。それに暇つぶしさえあれば問題ないと思いますよ」
長く生きてはいても、マリはそこまで精神が成熟してない。
今回のこれも子供の悪戯のような感覚なのだろう。
だからこそ、何とでもなる。
「そういう事なら任せるよ。雑事は僕が上手いこと片付けるから、シリウスはシリウスのしたいようにするといいよ」
俺の言葉を信じてそう即座に言ってくれるレグルス兄様。
本当に優しくて頼りになります。
「マリ。実は最高の暇つぶしがあるんだけど」
「それって何?」
「それを教える前に。マリがしたのことが本当はすごく危ないってことをまずしっかりと分かって欲しいんだ」
マリの性格からして、普通に話しても聞き流すだけだろうし、たとえ聞いてもそのうちそれは曖昧になっていく。
だからこそ、マリにあった話し方で、分かりやすくかつ、断片的でも思い出しやすく刷り込むように上手く話す。
「……そっか。かなり危ないことしてたんだね」
話術に自信がある方ではないが、前世でぬらりひょんと意思疎通した時のように上手く伝えると、僅かながら納得したような表情を浮かべるマリ。
ここまでで二時間近くかかった。
その間、レグルス兄様はこの場を俺に任せて、後々のために動いてくれてるようだ。
本当にありがとうございます。
「それで、私は何をすればいいの?」
「俺の元で色々と動いて欲しいんだ」
「それだけ?」
「それだけだけど、きっと最高の暇つぶしになると思うよ」
マリに必要なのは、長い時を生きる上での最高の暇つぶし。
興味があることがあれば探す必要も無いものだが、マリ自身はそれを持ち合わせてない。
だからこそ、俺は前々からやろうと温めていたものをマリにやってもらう事にした。
それは以前、女神様に教わった神の遊戯のひとつ。
チェスや将棋、囲碁などといった人の遊びから、ありとあらゆるものを混ぜたような盤上ゲームなのだが、その複雑さから人の身では極めることすら困難とされているそのゲームをマリにやってもらうつもりだ。
ハマるかどうかというのは関係ない。
神の遊戯というのは、人の理解を超えたものだ。
そして、神でない者には極めることすら困難。
だからこそ、最高の暇つぶしになる。
つまるところ、俺はマリにゲームを勧めるだけだ。
その結果は……後世に、マリが広めたゲームとしてそれがひっそりと残ったという実績をもって答えとする。
まあ、予想以上にマリがのめり込んで、寝食を忘れることが度々あるので、俺が度々世話を焼くことになったりもしたが……王城の宝物庫に忍び込むよりは楽しめることが出来たのは良い事だと思う。
俺も女神様とやる練習になって一石二鳥だしね。
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