第495話 チラつく陰
「ひいおじいちゃんの言う通り、暇つぶしがないと生きるのって大変なんだって知ってから、色々試してるんだ」
よく分からないという顔をしているレグルス兄様をスルーして、不法侵入者のマリは語る。
気がつければ知り合いが歳をとって知らない人になってる事が多々あるし、人の世界で生きるのは面倒だと。
とはいえ、俗世から離れても面白いことはそう多くはない。
だから、自分の力を使って、のらりくらりと面白そうなことを見つけて飛び込むようにしていると。
「ここ最近は新しいものが増えてきて、ちょっと楽しかったんだけど、たまにはスリルが欲しいなぁと思ってた時に確か聞いたんだよね」
かなり曖昧な台詞ではあるが、とある酒場で隣に座った客にスレインド王国の王城の警備の鉄壁さと、忍び込むスリルとやらを話をされて試して見たとのこと。
「だから、特に何か捕ろうとして入ったわけじゃないんだよね」
嘘はなく、本心を口にしてるのは魔法を使わなくても分かる。
そもそもこの当別製の牢屋では嘘は言えないし、自然と本当のことしか出てこないのだが、それ無しでもこの様子を見れば嘘ではないというのはよく分かるというもの。
レグルス兄様もその言葉を聞いてなんとも言えない表情を浮かべていた。
悪意を持ってではなく、度胸試しのように入り込まれてしまったのかと。
「困ったものだね」
ふぅっとため息を着くレグルス兄様。
俺はといえば、その話を聞いて嫌な想像を少ししてしまう。
マリにここのことを吹き込んだという客。
まるでマリのことを見透かしていて、利用したような……もっといえば、俺に嫌がらせの一環として送り込んできた最悪な神の姿を連想してしまう。
根拠はないが、気まぐれのようにこんな嫌がらせを幾度となく前世でされたからこそ、一見無意味なような事でさえもその様子からあの神の姿を嗅ぎつけるという技が身についているのだろう。
本当に迷惑極まりない神だ。
女神様の優しく清らかな心を少しは見習って欲しいものだ。
いや、やっぱなしで。
あの悪神に優しくされてもそれはそれできっと裏にあるのは策謀の糸だけだし。
女神様のように全てを包み込むようなあの優しさをあれが持てるわけもないしね。
警戒はしておくべきか。
いつだって気を抜いてはいないが、何があっても大丈夫なようには日々している。
今回のこれも俺に不快感を与える一環でやった気まぐれのようなもので、やったことさえ数秒後には忘れてるようなあの神にとっては些細なことなのだろうが、本当に気に食わない神だ。
何にしてもこの程度なら問題は無い。
レグルス兄様達に迷惑をかけたことは許せないけど、あの神への嫌悪や怒りは今に始まったことではない。
必ず後々精算してやる。
だからこそ、まずは目の前のことからだな。
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