第494話 ぬらりひょんのひ孫
「さて、じゃあまずは名前を聞いてもいいかな?」
己の力が通じないことに驚愕しているその女の子にそう聞くと、なんとか意識を戻したようで警戒気味の視線を向けてきた。
「……マリよ。あなたは?」
「俺はシリウス。シリウス・スレインドだよ」
「スレインド……確か、この国の名前もそれだったわね。じゃあ、あなたは王族か何か?」
「優秀な兄のお陰でのびのび暮らせれてる第3王子だよ」
なんちゃって王子でもあるけど。
「……ふーん。そうなんだ。それで?私……というか、私の一族を知ってるってことはひいじいちゃんの知り合い?」
「生憎と君のひいおいじさんのことは知らないかな」
今世ではぬらりひょんと会ったことはない。
前世の時には数人知り合いも居たけど、ぬらりひょんの一族はあまり増えないからなぁ。
恋愛感情というか、子孫を残すという本能が曖昧になってるので血が受け継がれていくタイプの種族ではなかったりする。
その上、寿命もかなり長いのでむしろこうして子孫が残っているのが奇跡に近いかもしれない。
「……まあ、そうよね。ひいじいちゃんはかなり前に死んじゃったし、どう見てもあなたはひいじいちゃんが死んじゃった後に生まれてそうな年齢だものね」
俺を見てそう呟くマリという少女。
いや、少女の見た目だが振る舞いや力の力量を見るに見た目の倍は歳を重ねてる可能性がありそうだ。
長寿の種族の一部と考えると分かりやすいかもしれない。
「ここに忍び込んだのは何か欲しいものでもあったの?」
「ただの暇つぶしよ。この国のお城は警備が厳重って話を聞いたから、試して見ただけ。特に欲しいものはないから」
嘘は言ってないようだ。
ただ、気になった点もある。
「それは誰から聞いたの?」
「覚えてない。あの時はかなり酔ってたし」
曖昧な記憶を断片的に口にするマリの話を整理すると、マリはひいおいじさんのぬらりひょんとしての血を色濃く受け継ぎ、その力と人よりも長い寿命を生まれ持ってたようだ。
変化が遅い成長で色々と面倒事もあったようだけど、ひいおじいさんから『人生はいかに暇を潰せるかにかかってる』との教えを受けたらしく、色んな暇つぶしに精を出してるらしい。
「暇つぶしかぁ……僕らにはイマイチぴんとこないね」
レグルス兄様からすれば、日々やる事もやらないといけない事も山積みなので、暇つぶしを探すという事自体がよく分からない感覚なのだろう。
まあ、普通の人間としてはそれが正しいのかもしれない。
こういうのは長寿の種族ならではの悩みのようなものだしね。
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