第487話 獣人族の決まり

ご両親への挨拶は恙無く終わったと言ってもいい結果だと思う。


父親のドーベルが嬉し泣きで所々会話にならなかったりはしたけど、奥さんのフォローで一応はなんとかなった。


まあ、その奥さんは娘を祝いつつ、色々とからかったりしてたけどそれでクーデリンの緊張は和らいだようで良かった。


そんな訳で挨拶は終わったんだけど、俺はその後すぐにクーデリンと二人で村の近くの森へと出かけることになった。


「獣人族にはね、夫婦になる者にちょっとした催しがあるのよね〜」


そんな奥さんの言葉から、なんとか建て直したドーベルの話によると、獣人族の風習で結婚or婚約した者向けのイベントというか、儀式のようなものがあるそうで。


二人で近くの祠に挨拶に行き、その帰りに二人で森の恵みを持ち帰って、二人で食べるというものがあるらしい。


夫婦円満を祈願するものらしく、何気にトリス達もやっていたらしい。


してもしなくてもいいとドーベルには言われたけど、夫婦円満を祈願するというのは大切なことだ。


郷に入っては郷に従えとも言うし、何よりも面白そうなイベントをスルーすることもないだろうと、クーデリンに許可を貰って二人で森に行くことにした。


祠まではそんなに距離もなく、割とすぐに見つけたのでお祈りはすぐに済み、残るは森の恵みを持ち帰って食べるだけ。


「せっかくだし、色々作れるように沢山持ち帰ろうか」

「ですね」


少しは緊張が解れたクーデリンと二人でキノコや山菜などを持ち帰るけど、途中で大物の猪を見つけた時は少し迷った。


祝いのイベントで殺生はありかなしか。


クーデリンによると、森の恵みの定義は森から与えられたものなのでセーフとのこと。


なら、肉もあった方がいいだろうと二人で猪を狩ることに。


「色々集まりましたね」

「だね。じゃあ、帰って二人で作ろうか」

「はい!」


こうして二人で森を歩くのも中々楽しかったけど、その後に二人で料理してる時の方がお互いにもっと楽しいと思える辺り、結構似てるのかもしれない。


結果として、かなり森の恵みを持ち帰ってこれたので村人に振る舞うことにもなったが、二人で料理というのは新婚さんぽくて中々楽しかった。


家庭的で和むクーデリンとなら楽しくやっていけそうだ。


そんな当たり前のことを再度思う辺り、このイベントは無駄じゃなかったのかもしれないなぁと思いながら、二人で作った料理を食べてまったり。


結婚式の時も二人で料理を作りたいと可愛いお願いをしてくるクーデリンに和みながら、それはそれで俺たちらしいと笑い合う。


ベロンベロンに酔ったドーベルや村人達にも祝われて、悪くない夜でした。

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