第486話 兄妹の祝福

数日後、最初に挨拶に向かったのはクーデリン実家だった。


前に来た時とは違い、娘さんを貰いに来たと言いに行くのは中々に緊張するが、隣のソワソワしてるクーデリンを見てると自然と落ち着かないといけないなぁと思えるから不思議だ。


「クーデリン。大丈夫だよ」

「す、すみません。なんだか凄く落ち着かなくて……だ、大丈夫です!絶対、私達の結婚を許して貰いますから!」

「そうだね。でもそれは俺から頼むことだから、クーデリンは素直な気持ちをご両親やトリスに伝えるといいよ」

「シリウス様……は、はい。頑張ります!」


ぴょこぴょこと揺れる耳と尻尾が愛らしい。


こういう愛嬌のある所も気に入ってるのだろうなぁと思いながら、軽く頭を撫でて獣人族の村に転移する。


久しぶりという程でもないけど、相変わらずのどかな獣人族の村に着くと既に俺とクーデリンのことは伝わっていたのか、ちょっとした宴を開く準備をしているようだった。


「やぁ、シリウス。待ってたよ」


クーデリンの家の前に着くと、クーデリンの兄であるトリスが出迎えてくれた。


「新婚生活は順調そうかって、聞くまでもなさそうだね」


トリスの後ろに控えている、非常にツヤツヤした幼なじみの奥さんの顔を見れば満喫してるのは聞くまでもなかっただろう。


「毎日寝不足だけど、凄く楽しんでるよ」

「それは良かった」


夜の営みは非常に大変そうだけど、ラブラブなようで友人として喜ばしいよ。


「約束。守ってくれたんだね」


ふと、そんな事を言うトリス。


以前に、俺にクーデリンを任せたいと言って、俺がそれに頷いたことだろう。


「約束だからって訳じゃないよ。クーデリンに隣に居て欲しいと思ったから俺はクーデリンにプロポーズしたんだよ。そして、それをクーデリンは受け入れてくれた」

「君らしいね」


そう笑うと、トリスはクーデリン視線を向ける。


「クーデリン。色々迷惑かけたね。僕はこの通り今幸せだよ。だから――クーデリンもシリウスと幸せになりなさい」

「お兄ちゃん……うん。ありがとう」


そうして兄妹で笑い合うとトリスは「父と母は中に居るから。頑張りなよ」と言って俺たちを二人の元に案内する。


とりあえずお兄さんの許しは得たってことかな。


「トリス。これからも宜しくね」

「こちらこそだよ。友としても義兄弟としてもね」


そんなやり取りをしてから、俺はクーデリンの手を引いて、ご両親の元に向かう。


繋いだ手から伝わる体温で、ますますクーデリンが緊張を濃く……というか、別の意味でドキドキしてるのが伝わってくるけど、ギュッと力強く握り返してくる手からは嬉しさが伝わってきた。


さて、気合い入れていきますか。

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