第314話 安心と信頼の父兄

落ち着いたアンネから、ある程度詳しい話を聞くことに成功する。


ヌロスレアの崩壊の理由は多岐にわたり、自分は勿論、ケイオスの手にすら余るレベルであること。


どうあっても、繰り返しの中で自分やケイオス達は必ず死ぬこと。


そして、何故か俺の存在が今回の繰り返しまではなかったとのこと。


ふむ、俺の情報ではなく、存在自体がなかったか……


「アンネ、少しだけ魔法で記憶を見させて貰ってもいいかな?」

「それは構いませんが……そんな事も出来るのですか?」

「諸事情でね」


そう言うと察するように納得してくれるアンネ。


魔眼という要素で共感してくれてるのだろう。


正確には少し違うけど、まあそれはいいとしよう。


あまりプライベートは見ないようにしつつ、お言葉に甘えて必要な部分だけを読み取っていく。


その中で、ヌロスレアの崩壊とアンネやケイオスの死も何度となく見てしまうが、顔に出さずに読み取る。


(うーん、本当に俺の存在がないなぁ)


その中で、アンネの言葉通り俺の存在が確認できるのは今の繰り返しのみで、それ以前は情報以前に存在してないことになっていた。


その辺は転生による影響だろうか?


アンネの記憶だけだと、ヌロスレア以外の国の情報は得にくいけど、魔法によってケイオス周りの情報を補正して確認すると、ヌロスレア崩壊を治めたのは最終的にはシスタシア王国のようだ。


死んだ後の情報は調べるのが非常に疲れるのだけど、それでも使って見てみると、ヌロスレアが崩壊した後、機会を伺っていたヘルメス義兄様がどの繰り返しでもその後を上手いこと対処しており、その後にスレインド王国の支援もあって最終的には何とかなっていた。


ヌロスレアの犠牲の多さは凄まじいけど、周辺国もその影響を少なからず受ける中で、ほとんどダメージもなくその後を上手くまとめる父様やレグルス兄様、そしてヘルメス義兄様は流石であった。


自国の防衛とその先を見据えた姿勢……尊敬します。


とはいえ、ヌロスレアの崩壊を止めるのには時間が足りなかったようだし、自由に動ける俺が居たからこそ迅速な対応が出来たのかもしれない。


そういう意味では多少役には立ったのだろうか?


そうだと嬉しいけど、俺としてはアリシアや孤児院の子供達、それにアンネとヘルメスの事も助けたいと思ったのでもっと頑張らないとね。


しかし、クーデターに流行病と覚えのあるシチュエーションがズラリと並んでいるのを見るに、俺の想像よりもこの国は詰んでいたのかもしれない。


「アンネ、ありがとう」

「いえ、こちらこそありがとうございます」


プライバシーはなるべく守ったけど、信じて見せてくれたこの子の勇気には敬意を表したい。


俺に出来ることとなれば……一つしかないかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る