第305話 アネP

「シリウスちゃん、凄かったわ!」


テントに戻ると、マッチョで乙女な店主が興奮したように迎えてくれる。


ガタイが良いので、戦意旺盛にも見えるが、それはそれ。


「ありがとう。予想よりもウケたようで良かったよ」

「ウケたなんてレベルじゃないわよ!これは大きなお仕事になるわ!」


言い過ぎな気もするが……まあ、それだけ高評価ならよしとしよう。


「じゃあ、最初に話した件は引き受けて貰えそうかな?」

「ええ、もちろんよ!」


何の話かといえば、実はこの店主にこのミュージシャン達のマネージャーになって貰いたいと相談していたのだ。


「俺が手を貸せるのはヌロスレアに居るうちだけだけど、本物も用意出来るようにしてるし、上手いことやって欲しいかな」

「ここまでお膳立てされたらむしろ成功しかないわね!」


そうかな?


なお、本当というのは、俺が架空の歌手を作る際に参考にした人達のことだ。


多少、イジってある部分もあるけど、鍛え方で十分カバー出来る範囲にしておいたし、問題ないはず。


その人たちが間に合ってたら、今日のステージに立ってもらったんだけど……流石に一週間は厳しいね。


だからこその代打だったけど、やる気は十分だひ素質もあるし、きっと彼女たちなら成し遂げてくれるだろう。


「じゃあ、改めて……よろしくね、アネP」

「こちらこそ、よろしくねシリウスちゃん」


アネPとは、マッチョで乙女な店主のあだ名。


アネが何を示しているのかは想像で補って欲しい。


ふぅ……それにしても、こんなに分身魔法を使ったのは久しぶり過ぎるなぁ。


前世の英雄時代では多忙すぎて、かなり使っていたけど、今世では使う機会もなかったしね。


変身魔法も、潜入や調査ではそこそこ活躍するけど……上位の存在ほどただの変身魔法は効果がないので、使ったのは本当に久しぶり。


女神様のくれた変身できる懐中時計が上位互換すぎたもの大きいかも。


流石は女神様。


尊敬しております。


さてと……これで、初日のライブは終わりだけど、今後の反響次第で週一くらいは俺が頑張る必要があるかもしれない。


今のままでも十分回せるけど……削れる部分もあったし、再調整もしておこう。


ヌロスレアにいる間、問題が片付くまで、そしてオリジナルの人達が完成したら俺の役目は終わる。


終わりが見えるのなら大して大変ではないし、モーマンタイ。


まあ、俺の頑張りを笑い転げていた虎太郎には後で意地悪をしよう。


具体的には夕飯のカツ丼を肉を少なくして、玉ねぎとネギマシマシにする。


小さいことでもコツコツとだよね。

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