第304話 シリウス七変化
『お前ら盛り上がってくぞー!』
ロックなイケメン歌手――俺の変身したその架空歌手の名前はヒビキ。
スイレンは老若男女問わずに人気を博すだろうが、全員が全員女の子というのも物足りない。
なので、女性受けも狙ってのヒビキだったが……女性ファン以外にも若い男にも人気が出ているようだ。
カッコイイ今日は男女問わず魅了するしね。
ヒビキはギター&ボーカルなので、ベースとドラム担当もちゃんといる。
……全員俺の変身した分身だけど。
なお、楽器はこの日のために俺が作りました。
元々あるものが少なかったけど……頑張った。
『みんな〜!れっつらごーだよ〜!』
女性受けの次は男性受け。
架空のアイドル歌手……名前はエレン。
ポップなアイドルソングで男性客を虜にする。
『拙者、ただの歌侍でござる』
幅広く取り込むために、架空の演歌歌手のソウメイ。
『俺たち〜』
『『『めちゃラブセンセーション!』』』
男性アイドルユニットのケーシーズ。
『100パーセント恋心♡』
女性アイドルユニットのラブラバー。
『愛を叫べ――!』
最後に、女性ボーカルのミカがメインのバンドのデモシス。
これら全て、俺が一人で魔法を使って演じました。
中々に頑張ったと思う。
それぞれに、歌ごとに魔法を使い分けて、観客へのヒーリング効果まで変えてみたけど……いやぁ、忙しいのなんのって。
分身自体が個別に動ける魔法だからこそ何とかなったけど、必要ならオリジナルが操作できる術式は余計だったかな?
でも、保険には用意しておいて損は無いか。
スイレンを含めて、以上の七組が今回のプロジェクトのメイン。
全ての曲が終わる頃には、民衆は生きる気力を取り戻していた。
わざと通しておいたヌロスレアの騎士もいい感じに盛り上がってるし、この光景はあの偽物も見ているようだ。
疑われるようなヘマはしてないけど、あの偽物を騙し通すためにもう一手かな。
アンコールを求められたので、ラストはこれまでの歌手全員をステージに集めてのフィナーレの曲。
ここまですれば、俺が一人で全てこなしてるというのは考えにくくなる。
それにしても、舞台の全員が俺の変身した分身なのを知るとかなり冷めそうなものだけど……アリシアは相も変わらず楽しそうだし、シエルは演歌歌手のソウメイに声援をおくっており、虎太郎は端の方で腹が捩れてそうな程に笑い転げている。
煩いので魔法で隠蔽隔離してるけど、笑いすぎでは?
まあ、孤児院の子供たちも楽しんでくれたようだし、頑張った甲斐はあったかな。
そうして、『ディーヴァ・プロジェクト』は大成功と言っていい成果になったのだが、予想以上に人気になりすぎて他国からも要請が来ることになるとはこの時の俺は知る由もなかった。
ヌロスレアだけのつもりだったのになぁ……。
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