第265話 スラム街へ

朝食を終えて少しのんびりとした後、俺は虎太朗を連れてヌロスレア王国のスラム街へと足を運んでいた。


「スラムってのは、やっぱり何処にでもあるもんだな」

「人が多ければ多いほど生まれやすいのかもね」


俺一人だと迷い込んだ子供だと思われて、そこそこヤンチャ方々や厄介なのに絡まれそうだが、こういう時に見た目が強面で身体も大きく、威圧感もある虎太朗が居ると大変スムーズに移動ができて助かる。


大人モード(女神様から貰った懐中時計によってなれる姿)ならその辺は気にしなくても良いのだが、今は第3王子のシリウスとしての姿で出向く必要があるので仕方ない。


孤児院の守りはステルス状態のゴーレム達に任せてあるし、結界も昨夜よりもバージョンアップさせたのでその辺はあまり気にしなくて良いのだが、万が一ということもあるしやはりもう一人くらい補佐役が居ると助かるなぁと思ったので、その辺はおいおい考えるとしよう。


「んで、坊主はここに誰に会いに来たんだ?」

「ここの人たちを束ねてるまとめ役……かな」


現状、ヌロスレア王国には大きくわけて4つのグループがある。


1つは今の国王の治世で美味しい思いをしている『国』に属してるグループ。


次に圧政に苦しめられるその他の国民たち。


そして、そんな彼らを救おうと画策するクーデター組織。


残りの1つが今現在足を運んでいるスラム街の住人たちだ。


細かく分ければ他にもあるのだが、現状ではこの4つのグループが国には存在してると言える。


クーデター組織の立て直しはこれからビリオンがするだろうし、彼らの動き次第で国民を救うことも出来るだろうが、その前にどうしても話をつけておかないといけないのがこのスラム街の住人たちであった。


「いきなり来た余所者の話を聞くのかね」

「一応、昨日のうちに口添えはして貰ったけど……まあ、その辺は上手いことやるよ」


アリシアと出掛けた時に、紹介して貰った少し変わった店主。


彼もとい彼女に頼んで、今日会えるように話は通して貰ったのだけど、それにしてもやはりあの店主は相当にやり手だ。


オマケとしてあれこれと欲しかった情報も追加で届けてくれたし、これからも仲良くしていきたいものだが、まあ、まずはヌロスレアを平和にしないとね。


「相変わらず坊主は抜け目ないな。まあ、難しい話は分からんから俺は適当に護衛のフリしてればいいんだろ?」

「頼りにしてるよ」

「おう、任せとけ」


ニカッと笑う虎太朗。


強面なのに不思議と安心感のある笑みが浮かべられるのは虎太朗の虎太朗足りうる所以かもしれないなぁと少し思った。













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