第262話 乙女の勘

「お帰りなさいませ、シリウス様」


孤児院に戻ると、俺たちの帰りを待っていたのか、こんな夜遅くまで起きていたアリシアが笑顔で出迎えてくれる。


「ただいま、アリシア。わざわざ待っててくれんだね。ありがとう」

「いえ、やる事もありましたし。それに、何となくシリウス様がそろそろ帰ってくるかと思ったので、お待ちさせて頂いただけですから」


女の子とは俺たち男には備わってない独特の特殊な勘のようなものがあるのだろうかと思ったが、何にしても出迎えてくれたアリシアの存在は不思議と落ち着くので思わず微笑んでしまう。


「そっか、ありがとう」

「シリウス様の方は用事は大丈夫でしたか?」

「虎太朗が居たからね。大したことはしてないよ」

「ほー、暗殺防いだり、組織の不正を正したのが大したことないたぁ、流石坊主だな」


言葉にするとかなり大層なことをしてるように思えるけど、少し魔法を使って手助けして、虎太朗で黙らせただけなので悪しからず。


「何にしても、今日のところは眠いし少し仮眠を取るよ。明日からまた色々動くことにもなるだろうしね」

「私たちのために……でしょうか?」


どこか申し訳なさそうなアリシアに俺は気にする事はないと安心させるようにポンポンと優しく頭を撫でながら優しく微笑むと言った。


「勿論、アリシア達の今後のためでもあるけど、これは俺のしたい事だから気にしなくていいよ。こうして接してて、アリシアのことも子供たちのことも好きになっちゃったし、俺の我儘で守らせて欲しいかな」

「シリウス様……」


うるうるとした瞳を向けてくるアリシア。


その光景を見ている虎太朗は実にいい笑みを浮かべていたけど……口説いてるとでも思われてそうなのが少し心外だ。


心から思ってることを口にしてるだけで、下心など微塵もないのだが、それを分かっていてもそうしてニヤニヤしながら見てくる虎太朗は本当にいい性格をしてると思う。


「んじゃあ、俺は先に子供たちに混じって寝てるから、お二人さんはイチャイチャしてから寝ろなー。何なら添い寝でもしてやるといいぞー」

「そ、添い寝……!あ、えっと、あの、そのぅ……はぅ……」


虎太郎の茶化すような言葉に赤くなるアリシアだが、確かに最近はいつも婚約者達と一緒に寝ていたので一人で寝るのは久しぶりかもしれないなぁ。


あ、そうだ。


「魅力的な提案だけど、今夜は俺も子供たちに混じって寝たいかな。アリシアも一緒にどう?」

「そ、それなら何とか……」

「おう、なら休むとしようぜ」


そうして子供たちに混じって寝ることになったけど、婚約者達と離れてる時間がこういう形で影響してくるとは……やっぱり俺には婚約者達が必要なのだろうとしみじみと思うのであった。


早くこの件を片付けて、帰れるようにしないとね。








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