第261話 歓楽街
クーデター組織のお掃除を軽くしたので、俺と虎太郎は孤児院へと戻るために来た道を引き返していた。
来る時の案内役のビケニィが離れらなくても、大体の道筋やギミックの解き方なんかは把握していたので問題はなかったのだが……
「わぁ、ここって歓楽街だったんだ」
妙に人の気配が強い場所があるので思わず覗き込むと、どうやら夜のお店が集まってる歓楽街が近いらしい。
「ほぉ、色街ってのは不景気でも栄えるんだな」
「場所にもよるでしょ。この辺は貴族がお得意な所とかが多いのかも」
服装的にも中層クラスの貴族だろうか?
それなりに恩恵を受けてそうなので羽振りもいいのかもしれない。
民が圧政と重税に苦しんでる中でも上はこれなのだから、人とは何とも罪深い生き物なのかもしれないなぁとアホみたいな感想を抱く。
「なるほどなぁ……んで、行くのか?」
「いんや。眠いしさっさと戻ろう」
「だな。俺も嫁さんや子供たちに知られたくないしもう行けねぇなぁ」
口振り的には、故郷とかではお世話になったのかもしれないが、野暮なことは聞かない方がいいだろう。
「つうか、坊主はこういう場所に興味あるのか?」
「んや。全く」
我ながら不思議なことに、前世からこの手のお店には欠片も興味がわかなかったりする。
無論、美少女や美女は凄く目の保養になるけど、好きな相手以外を抱こうとは思えないし、ぶっちゃけ英雄時代の前世でのトラウマが割と深刻なのでそういったお店には絶対行かないと思う。
それに……
「そういう場所に行くと、婚約者達に余計な心労をかけそうだしね」
「あー、確かに坊主の嫁さんたちは皆重たいくらいに坊主にベタ惚れだからなぁ……むしろ、同行した俺が嬢ちゃん達に刺されるかもしれねぇなぁ……」
優しい婚約者達は、俺が自分の意思でそこに行ったのではなく、虎太朗が誘ったと解釈するかもなので全くないと言えない予想ではあったが、それはそれ。
「何にしても、視察とかでない限りは行く気はないかな」
「視察なら行くのか?」
「領主としてのお仕事だからね」
無論、視察と称して夜の街で遊ぶような真似はする気もないので、本当にただの視察だが……というか、とりあえず虎太朗は俺がまだ10歳と少しである事を思い出すところから始めた方がいい気がしてくる。
成人まであと数年とはいえ、まだまだギリギリ子供扱いできる(この世界的には)年齢なのだが、虎太朗は俺を成人した大人として見てそうなのでそこの所はもう少し俺が子供らしくするようにした方がいいのかもしれないなぁと少し思った。
何にしても、婚約者達を悲しませるような真似をすることはせず、俺は孤児院に真っ直ぐ戻るが……女ではなくお酒に興味津々の様子の虎太朗には今度ビリオンからオススメのお店の酒を持ってきてもらうことにして満足してもらうとしよう。
そういうのも詳しいそうだし、ビリオンはやはりできる男なのだろうなぁ。
羨ましい限りです。
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