第249話 虎太郎も子供好き
「おう、戻ったか坊主」
アリシアと一緒に孤児院に戻ると、そこにはヤンチャな男の子たちに囲まれて遊具と化している虎太郎が待っていた。
虎太郎は体も大きいし、その体も筋肉が凄いので好奇心旺盛な子供達に群がられるのは何となく分かりきっていたが……にしても、強面と子供好きというのは属性としてはやはりセットなのだろうかとふとどうでも良いことも考えてしまう。
「ただいま、虎太郎。楽しそうだね」
「おう!息子が大きくなった時が楽しみだぜ」
もみくちゃにされながらもニカッと笑う虎太郎は心底楽しそうだ。
両手にぶら下がってキャッキャとはしゃぐ子供もいれば、虎太郎という歪な筋肉の山を果敢にも登ろうとする有志もおり、微笑ましい光景でもあった。
「虎太郎様、今日はありがとうございました」
そんな虎太郎にお礼を言うアリシアだけど、子供たちの様子に少し申し訳ないと思ったのか表情にバッチリそれが出ていた。
「おう、楽しめたか?」
「……はい、とっても」
ギュッと大切そうに先程買ったブローチに手を当てて笑みを浮かべるアリシア。
そんなアリシアの様子を見て、虎太郎は何かを察したようにニヤニヤと俺に視線を向けてくる。
別にそんな顔をされるようなことはしてないのだが……『上手いこと口説いてきたみたいだな』と言ってるように思えてしまう。
……いや、別に口説いてないんだけど……街の案内をして少し仲良くなったくらいだし。
「なら良かった。そういや、坊主達が出てってから何人かここに近づいてきた気配があったが、坊主の結界は完璧に仕事してたみたいだぜ」
「それなら良かったよ」
アリシアを襲おうとしていた男たちのお仲間か、はたまたその他の不埒ものか後で確かめることにしよう。
孤児院に用事のあった人の可能性もなくはないのだが、その場合は虎太郎が気づいて対応してるはずだし、それが無いというのなら恐らくは害意のあるお客さんだったのだろうと予想はつく。
そっちは後で俺が対応すればいいのでとりあえずはいいとして……。
「さてと……じゃあ、もう少ししたら夕飯でも作ろうか」
「お?飯か?」
「アリシアのお陰で色々手に入ったから、せっかくだし実験も兼ねてね」
面白い店主との出会いだけでなく、面白い食材とも出会えたのでせっかくだし色々作ってみよう。
「あの、私にもお手伝いさせてください」
「勿論だよ。頼りにしてるよアリシア」
そう言うと嬉しそうに微笑むアリシア。
料理上手なアリシアのサポートは非常に有難いので、孤児院の子供たちの夕飯を二人で作ることになるのだが、その様子を見て虎太郎が『新婚みたいだな』と言ってアリシアを照れさせたのだが、その様子が満更でもなさそうに思えたのは流石に気のせいだよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます