第245話 喫茶店で一息

面白い店主との縁が出来た後もアリシアと軽くお店を回ってみるが、やはり先程のお店がこの国で最も品揃えも豊富で安全地帯にもなり得そうに思えたのは言うまでもないのだが、それでも圧政の中で上手いこと商売してる人たちも居るようで、回ってみると色んな発見もあった。


「アリシア、疲れてない?」

「はい、大丈夫です」


そうは言っても、そこそこ探索に付き合わせてしまったので、お礼も兼ねて少しお高めの喫茶店に寄ることにするが……やはり、そこそこのお値段の所だと富裕層からの来客も多いのか、店内は比較的落ち着いていた。


「今日は付き合ってくれてありがとう。好きなの頼んでいいよ」

「えっと……でも、いいのですか?かなりその……お値段が……」


まあ、流石に少しお高めのお店な上に、この重税だと一つ一つの商品のお値段もそこそこするが、この程度なら大した出費にもならないし、問題ない。


「気にせず頼みなよ。落ち着いたらこういうお店にも子供たちを連れて来たいし、視察も兼ねて……ね」

「……分かりました。じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます」


無意識なのだろうけど、俺のお財布だけでなく、子供たちの事も考えて自分だけお高いものを食べてもいいのか考えてそうだったのでそう言うと、頷いてくれるアリシア。


こういう所で押し問答にならないのは、有難いかも。


その辺の臨機応変さと、真面目さも含めてアリシアらしさがあって俺としては好ましいところだが……それにしても、シスター服の女の子とお茶をする機会が出来るとは人生とは分からないものだ。


「へー、ブルーベリーのタルトか……葡萄のタルトも良いけど迷うなぁ……」

「えっと、私のでよければどちらか頼んで分けますよ?」


メニューを見て、その二択で少し迷っているとそんな風にやんわりと提案してくるアリシア。


「いいの?他に頼みたいものとかは?」

「私も同じもので悩んでましたし、良かったら分け合いましょう」


そう微笑むアリシアだが、こういうナチュラルな優しさは地のものなのだろうなぁと、今世で出会ってきた人たちを見てしみじみと思った。


家族も婚約者も、ナチュラルにピュアで優しい心の持ち主なので俺の汚れ具合がくっきりと見えてしまうのだが……まあ、それはそれとしておこう。


「ありがとう。なら、俺はブルーベリーのタルトを頼むから、一緒に食べようか」

「はい、私は葡萄のタルトにしますね」

「紅茶はどうする?」

「えっと……シリウス様と同じものにします」

「分かったよ」


あまり地元では見ない種類の茶葉もあったので、そちらを頼むけど……ふむ、これは家族へのお土産にいいかもしれないな。


後で買おうと軽くチェックしておくと、俺はのんびりとアリシアと雑談に興じる。



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