第241話 息抜きのお誘い

この件が早く片付くか否か。


それが分からない状況でもとりあえずやるべき事、出来ることは無数にあるので俺は孤児院の設備の残りの補強と、孤児院の周囲に結界を張って人の出入りを制限することにした。


「すげぇな。気を抜くと見失いそうだぜ」

「でしょ。自信作だよ」


虎太郎程の猛者でもこれなので、恐らくこの国の現状の最強戦力であろうと見つけるのは困難だろう。


「えっと……虎太郎様には孤児院が見えてないのですか?」


不思議そうに首を傾げるアリシア。


実験も兼ねて虎太郎を一度孤児院の周囲を認識する結界の対象から外したのだが、アリシアや孤児院の子供達に他のシスターさんにはちゃんと見えるようにしてるので思わず気になって尋ねたのだろう。


「まあね。これで多少は面倒なお客様も少なくなるでしょ」

「本当にありがとうございます、シリウス様」

「気にしなくていいよ」

「いえ、本当にシリウス様には感謝しかありません。だから、絶対にお礼をさせてくださいね」


俺としてはそこまで大したことは本当にしてないと思ってるのだが……律儀というか真面目というか、でもお堅いわけでもないので、不思議な子だ。


「分かったよ。じゃあ、そのお礼は楽しみにしてるけど……それはそれとして、少し街歩きに付き合ってくれない?」

「街歩き……ですか?」

「うん、地元の人のガイドが欲しかったし。色々他にも見て回りたいから付き合って欲しいなぁと、思ってさ」


子供たちとの時間を奪わないよう、そこまで長時間連れ出す気はないけど、それでもアリシアの息抜きと……それと、俺個人としても地元のガイドが居ればまた違った楽しみ方を出来るかもしれないのでそう言うとアリシアはこくりと首を縦に振ってくれた。


「お役に立てるかはわかりませんが、シリウス様がそう言うなら是非」

「ありがとう、アリシア」


何にしても、虎太郎と歩いてるよりは華のある絵面にはなりそうだが、その虎太郎は俺とアリシアの会話をニヤニヤして見守っていたかと思ったらこんな事を言う。


「なら、嬢ちゃんを心配させないようにここの守りは俺に任せてお二人さんで行ってくるといい」

「宜しいのですか?」

「坊主は強いから、俺が居なくても大丈夫だろ」


まあ、それはそうかもだが……余計なお節介を働かせてそうな言葉に聞こえる俺は心が汚れてるのだろうか?


「では、よろしくお願いします」

「おう、頑張ってきな」


その頑張れが何を示しているのか定かではないが、とりあえず虎太郎が居るなら留守番は問題ないだろうと俺は気にしないことにしてアリシアと共に街に繰り出すのであった。









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