第202話 優しさの基準

「それで、お父さんに認められる武器は作れそうなの?」


キャンディから受け取った鍋でついつい話が料理の方に向いてしまったけど、俺がここに来る理由の一つには、キャンディが俺に作ってくれる武器に関して話をするというのもあった。


「うーん、何だか難しくてねー……作る前は色々と自信あったのに、いざシリウスくんに作るとなると何だか上手くいかないんだよね」


これまで、武器以外はそこそこ作らせて貰えてたようだけど、使い手のために武器を作るのは初めてらしく、悩んでいるようだ。


一応、オーダーしているものはあるのだけど、納得のいく完成度にならないようで、時間はかかりそうだ。


「そんなに急がなくてもいいから、キャンディが納得いくまでやるといいよ」


武器を注文したはしたけど、今世の俺のスタイルは基本魔法主体なので、急ぎという訳でもない。


キャンディが思う傑作が出来るのなら、いくらでも待たせてもらうよ。


「ありがとう」

「お父さんには相談したの?」

「親父には言ってないんだ。まだ親父にも見せられるレベルじゃなくてさ」


キャンディ曰く、『全然ダメ』なレベルなのでまだ見せられないとか。


軽く見せて貰った限りでは、キャンディの才能の片鱗を感じさせる素晴らしいものだったけど、キャンディ的には俺に持たせるには足りないと思えるらしい。


なるほど、こうして職人は成長するのかと感心しつつも、思い詰めないようにフォローだけはしておく。


「そっか。何にしても俺でよければ息抜きとかは付き合うから遠慮しなくていいからね」

「シリウスくんは優しいね」

「そうでもないよ」


本当に優しい人達というのは、俺のように汚れきった心ではないと思うので、フィリアや女神様、婚約者達にこそ相応しいと思う。


「優しいよ。こうして付き合ってくれるんだからさ」

「キャンディも優しい娘だと思うけどね」

「俺が優しい……?」

「だって、こんなに俺の武器を作るのに一生懸命になってくれてるし、最初に俺がここに来た時も聖魔剣を持ってる俺を心配してくれたじゃない」


勘違いとはいえ、実の父親にああして堂々と言えるのだから、この子は根っからの善人なのだろうと思えた。


「そ、それは……勘違いしただけというか……武器だって、シリウスくんだからというか……」


俺の答えに、困ったようにもごもごと答えるキャンディ。


忙しなくキョロキョロしてから、白銀桃のジュースを飲み干すので、お代わりを注いであげると、一瞬目が合ってまた逸らされた。


嫌われてないとは思うけど、この反応はどう捉えればいいのやら……まあ、とりあえずは友好的な関係だし問題ないかな。


そんな事を思いつつ、俺も白銀桃のジュースで喉を潤すのだった。



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