第194話 教材の確認

「それじゃあ、主な部分は以上な。さて、いよいよお前らお待ちかねの教材を配るからなー」


学園の説明をしてから、Aクラスの担任のドレッドは重そうな箱から教科書などを配っていく。


魔法の才があり、高い教育にウキウキしていた生徒たちにはお待ちかねでも、俺としては見るのが少し怖くもある代物だった。


とはいえ、魔法使いの水準が下がったとは言っても限度があるし、悪くない教材のはずとパラパラと教科書を捲っていくと、ゲンナリしてしまう。


「え……?これって……」


同じくどこか驚いたような表情のフィリアだけど、同じ魔法使いのセシルに見せても似たような反応をすると思う。


理路整然とした叡智の結晶……だったらどれだけ良かったか。


中身は、魔法の属性ごとにそれぞれ一応分かれてはあっても、その他は簡単な説明と詠唱くらいしか書かれてない上に、明らかにページ数稼ぎに傘増しされた実用性としては微妙としか言えないものであった。


詠唱が書かれてるだけマシなのかもしれないけど。


人によってはこれでは発動しない人も居るらしいし、俺のように無詠唱の人は……まあ、そんなには居ないけどそこそこ居るはず。


(なるほどなぁ……これは考えないとダメかもなぁ)


この教材でも、確かに魔法師団に入れる人は多そうだけど……教材がこれだと教師によってバラつきや個人差があって、人によっては実りのある授業になるとは言えないように思えた。


魔法というのは、個人差があるとはいえ、ざっくりし過ぎなのでこれはもう少し何とかした方がいいかもなぁ……。


チラッと他の生徒たちを見れば、知らない、新しい魔法があれば嬉しそうにしていたけど、中には知ってる魔法の詠唱が違うのか首を傾げている子も居たようだ。


「細かい点は分かる範囲で教えるが、もっと詳しいそうな王子様が居るからな。無礼でない範囲なら俺よりもそっちに聞くのがいいと思うぞー」


サラッと俺に押し付ける辺り、いい性格をしていると思う。


まあ、この程度で俺が怒らないのと、学園長から話を聞いてるからだろう。


「座学は基本ここだが、実技はさっき説明した実習室か派手なのは外の演習場でやれよ。こんな所で魔法ぶっぱなしてたら弁償しないとだからな。熱心なやつなら、居残りするかもだが、そん時は担任の許可が必要だから面倒でも俺に言うこと。んじゃ、軽く授業な」


初日なので、それ程スケジュールは詰まってないのかゆるりとした授業を軽くしてから終わるけど、教科書に載ってない理論的な事もサラッと説明出来る様子を見れば、やはり教師としては悪かないのだろうと思った。


とはいえ、俺が知ってることが殆どだし、フィリアには俺が教えたのでフィリアも知っていたけど真面目なフィリアはきちんとノートを取っていた。


偉いねぇ、俺も一応やってるけど、紙資源の消費はよくないし止めるべきかな?



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