第191話 土林檎の人気
「へー、土林檎か。初めてみたよ」
エルフ姉妹の姉で、元高ランク冒険者のスフィアが珍しいと声を上げる。
「スフィアでも見たことないんだ」
「存在は知ってたけど、ドワーフなんて見たことないし、周りも他種族が嫌いだったからね」
それもそうか。
エルフはそういう点ではほとんど他種族とは交流がないので、スフィアが例外なだけだろう。
「でも美味しいね、これ」
「……うん、ジュースも美味」
エルフ姉妹の妹のセリアが洗って皮をむいて切った土林檎を食べて笑みを浮かべ、セシルが土林檎のジュースを美味しそうに飲む。
「ほら、ソルテも食べなよ」
『あむ……美味しいです』
「でしょ!」
妹でも愛でるようにハーフエルフのソルテに食べさせてあげるセリア。
婚約者同士で更に仲良くなったようで嬉しいよ。
「……シャルティアも飲むといい」
「そう言いながら飲めない分を押し付けるな。まあ、構わないが……」
「……土林檎の半分は土で出来てるから栄養満点」
「サラッと嘘をつくな!」
「……バレたなら仕方ない」
相変わらず巧みにシャルティアをイジるセシルはマイペースなようで何より。
「フィリアさん、何故土林檎と言うのでしょ?」
「木ではなく、土に近い場所で育ったから……でしょうか?」
フローラの疑問に、フィリアが俺に視線を向けるので頷くと嬉しそうに笑みを浮かべる。
しかし、フィリアもフローラも味わいつつもそんな考察をするのだから本当に真面目だ。
「シリウス殿、ドワーフとは強いのですか?」
そして、さり気なく混じっているダークエルフのシエル。
口止めはしてあるけど、婚約者の中にサラッと混じるのは流石のコミュ力と言えた。
「強い人も居なくはないけど、彼らの真骨頂は武器制作だからね。シエルも何か作ってもらうなら頼むけど?」
「いえ、シリウス殿から貰ったこれが最もあってますから」
前に渡した大剣が気に入っているのか、そんな事を笑顔で言われると悪い気はしない。
「あ、私は短剣か何か欲しいかも」
「私も!」
珍しくそんな事を言うスフィアと、姉に続くセリア。
仲良し姉妹ですなぁ。
「シャルティアは大丈夫?」
「私にはシリウス様から頂いた素晴らしい武器具がありますので」
シャルティアらしい答えに思わず微笑んでしまうけど、結局武器を作りたいと言ったのはスフィアとセリアだけだった。
まあ、他のメンバーには魔法か非戦闘員なので武器が必要ないのは当然かもしれないと思った。
その後はドワーフの話よりもお土産の土林檎やモグラ芋の話で盛り上がったのだけど、フィリアの手によって調理されたモグラ芋は凄く美味しかった。
土林檎でデザートも考案中らしいので凄く楽しみだと、俺は心底思った。
新しい料理は俺が作り、それをフィリアが高めるという流れになるけど、胃袋は完全に掴まれていたのは言うまでもないだろう。
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