第148話 料理での繋がり

お米といえば、和食が真っ先に思い浮かぶが、ラウル兄様なんかもさり気なく混ざりそうな気配があるので、丼物とかのボリュームがあるものも作っておく方がいいかもと思いつつ、作業を進める。


「ゼフス、そっちはどう?」

「ええ、いい感じですよ。流石シリウス様の持ってきた食材ですね。どれも良い状態です」

「そう言って貰えると嬉しいよ」


フライドポテトの頃からの付き合いの料理長のゼフスに、米や醤油、味噌なんかの使い方をレクチャーしつつ、他の慣れてる食材の下ごしらえを頼むが、相変わらず手際も良く作業も早いので助かる。


「入荷数がまだまだ少ないから、母様やラウル兄様達に出すときは慎重にね」

「ええ、分かってます」


母様の場合は、これらの食材や調味料でまた新しい商売を始めてしまうかもしれないので、程々にしておくようにというのと、ラウル兄様の場合はきっとお肉と一緒にバクバク食べるだろうからこその注意だが、長年仕えてるだけあって、その光景が目に浮かんだのかゼフスは苦笑気味に頷く。


「でも、本当にゼフスは腕が良いよね。息子さんの件は考えてくれた?」

「ええ、まあ……ウチのも乗り気ではありますが、本当にウチのボンクラでいいのですか?」


何の話かといえば、ゼフスの息子を俺の屋敷の料理長候補として迎えたいという話だったりする。


本当はゼフス本人を領地に連れて行きたい所だが、今世の家族に悪いし、ゼフス自身も望まないだろうから、息子の方に目をつけていたのだ。


ゼフスの息子……名をゾニスというのだが、父親の才を受け継いでるようで、日々料理の技量を上げているので、未来の可能性として貰うには十分すぎる人材と言えた。


「ゾニスなら信頼出来るしね。とりあえずゼフスが良いと思ったタイミングで送ってよ」

「分かりました。シリウス様に相応しい腕前になるよう厳しく鍛えておきます」

「程々にね」


こんな会話をしながらも、手早く作業を進められるのだか、ゼフスは本当に凄い。


俺もまあ、出来てはいても、本職では無いのでやはりどうしても不足は出てしまうのだが、初めての食材に限れば俺の方が最初は上手く作れるので、仕方ない。


「でも、ゾニスが乗り気なのは助かるよ。本当なら俺の領地に来るよりも、ここで働いてる方がいいはずだしね」


王宮付きの料理人というだけで、かなりのステータスなので、時期公爵の料理長というのはステータスだけで見たらやはりランクが下がるので、本人がそでも乗り気で居てくれるのは有難い。


その本人は、今日は居ないが……休みかな?


「他ならぬシリウス様の元で働けるなら、ウチの料理人なら誰でも喜んで着いていきますよ」

「それはどうも」


お世辞であっても、嬉しいものは嬉しいので照れ隠しの返事をしておく。


それにしても、今の言葉で他の場所で聞き耳を立てている料理人達が一斉に頷いてくれていたのは、ある意味壮観であった。


前世には無かった人望……まあ、ここで料理をしていたからこそ出来た繋がりとも言えるのだが、それも悪くは無いと思いながら、ゼフスへのレクチャーを続ける。












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