第98話 森デート

『えっと、これとこれも食べれますね』

『流石にこの辺は森の恵が豊富だね』


空の旅から数時間後、休憩を挟んでからシスタシア近くの広大な大森林に足を踏み入れると、あまり人が入らなそうな秘境まで足を運んでいた。


目的のものが何かは不明だが、何かを探しつつ俺とソルテはついでに山菜や木の実なんかも採取していた。


ソルテにはその手の知識もそこそこあるようで、食べられる山菜を的確に集めているが、中々手際が良かった。


『お父さんに教えて貰ったんです』


何でも、幼い頃……まあ、今も幼いが、まだ父親が生きていた時に父親の手伝いに森に入ることもあって、自然とその手の知識が身についているらしい。


俺もそちら方面に関しては、前世の事情でそこそこ詳しいので、山菜や木の実集めの効率はソルテのお陰でかなり捗った。


無論、自然の恵は貰いすぎないことが鉄則だが、この広大な森の中、ここまで来られるのは余程の実力者のみだろうし、多少取りすぎてもそこまで影響はないだろう。


現に、先程からソルテに気づかれないように俺たちを察知して襲うために向かってきている獰猛な野生動物やら、魔物なんかを退治して素材を遠距離から空間魔法で収納しているのだが……Cランクくらいの冒険者だと厳しそうな相手が何匹か混じってる辺り、この辺は思っているよりも難易度の高い場所に思えた。


単体なら、おそらくセシルやシャルティアでも勝てるだろうが、囲まれると厄介に思えるくらいには強い動物と魔物達。


幸いなのは、ソルテにはその手の鋭さや感覚がなく、認識外で俺がひっそり処理してるので、ソルテに怖い思いはさせてないということだろうか?


魔物や野生動物の存在自体、ソルテは気づいてないようだが、野生動物に関しては少なすぎると少し首を傾げていたようだが……まあ、友好的な関係を築けそうにない動物達のようだし、致し方ない。


『ご主人様、これ美味しいですよ』

『お、ホントだ。ソルテは詳しいね』

『えへへ……』


思わず褒めると、嬉しそうに微笑むソルテ。


なんというか、同年代……というか、若干年上のはずなのに、娘を相手にしてるような感覚になってくる。


それだけ、ソルテは非常識な状態、環境で育ったのだから、肉体と精神が若干アンバランスなのも納得とも言えるのだが……今、こうしてここに居られるのが奇跡とも言えた。


俺がもう少し早く、ソルテを助けてあげられていればという、傲慢な考えも持ってしまうが、無論、過去は変えようがないし、無理に変えるのも良くないので、前を向くに限る。


『帰ったら、今夜は取った山菜とかで夕飯にしようか』

『はい、セシルさんやシャルティアさんの分も取りましょう。フィリア様やフローラ様、スフィアさんとセリアさんにも食べて欲しいです』


人語はまだまだ話すのは拙いが、それでもそこそこ過ごしているうちに、俺の身内には心を許せてきているようで良かった。


セシルやシャルティアとは、普段から一緒が多いので、言葉の壁が多少あっても大丈夫だったし、フィリアやフローラとの関係も良好と言えた。


スフィアやセリアなんかは、エルフ語で会話が出来て打ち解けるのは割と早かったと言えるだろう。


それでも、まだまだ壁はあるだろうが……少しづつ、慣れていけばいいと俺は思っている。


『そうだね、じゃあ、もう少し取らないと』

『はい、頑張ります』


真面目で何事にも真剣なその様子は、なんと言うか俺の婚約者達に似ており、俺の婚約者達と共通な部分なのかもしれないと思った。


そうして、山菜類やキノコ、木の実なんかを沢山入手しているが、その裏でソルテが気が付かないように接近してくる獰猛な野生動物と魔物を狩って、肉も確保出来たので今夜は豪勢になりそうだ。


うむ、やはり森は恵が多くていいね。


デートというには、味気ないようだが、楽しそうなソルテの様子を見ると間違ってはいなさそうなので、今度から定期的に来てもいいかもと心のメモ帳に書いておく。


森ガールソルテ……ハーフエルフという種族と薄緑色の綺麗な髪と、本人の様子も相まって物凄く似合ってるなぁと思う。


癒し系美少女だね。
































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