第95話 別荘という贅沢
「ここが、ウチ所有の温泉付きの別荘だよ」
この領地で、街から少し離れた位置にあるその場所にあるのは、領主館とは別に用意した専用の別荘であった。
「別荘ですか?でも、御屋敷はこちらにもありますよね?」
首を傾げるフローラ。
普通に考えて、街にある領主館よりも小さな別荘をもう一つわざわざ用意する意味はあるのかと疑問になったのだろうが、まあ、それも仕方ない。
「確か、街の方々が進んで用意してくれた場所でしたよね?新しく見つけた、良い温泉が湧く場所をシリウス様に是非にと」
「まあね」
フィリアは、前に話したからか覚えていたようで、フローラの疑問に答えつつ俺にそう確認を取るが、フィリアの認識でほぼほぼ間違いはない。
一応、領主館にも温泉はあるのだが、そちらよりも量も多く、立地的にも良いその場所を当初は俺は別のプロジェクトに使えると思って、確保しようとしていたのだが、その土地の所有主と他にも多数の領民達が、俺へのせめてものお礼と言いながら色々と便宜を計ってくれたことで、別荘という形に落ち着いた。
まあ、他にも良い源泉はあるようだし、少し街から離れているので、大きめの屋敷のようなものがあっても違和感は無いのだが……なんだか、領民達が偉く俺に感謝しすぎてる気もする。
自分で言うもの何だけど、名君でも暗君でもない普通の領主だと思うのだが……前任者の酷さと、領地の人達の人柄、そしてアンデッド騒動からの復興支援と色々重なった結果、変に敬われてるように思う。
「本当はこの場所は領民達のために使おうかと思ってたんだけど……領民達から絶対に俺に使って欲しいという嘆願書が出てきたから、こうして婚約者達とのんびり過ごせそうな別荘を作らせて貰ったんだ」
「そんな嘆願書あるのですね」
「私も初めて聞きました」
どこか驚くフィリアとフローラだが、俺だってそんなことで嘆願書貰うなんて思わなかったよ。
「領主館は男女別だけど、こっちは混浴でその代わりに色々なお風呂を試せるように作ったから、楽しみにしててね」
「混浴……」
どこか恥ずかしそうにしながらも、ソワソワするフィリア。
うむ、相変わらず可愛い。
「結婚後が凄く楽しみになりますね」
こちらも、恥じらってはいるが、かなりノリノリなフローラさん。
「まあ、俺が入らなければ混浴にはならないから、入ろうと思えばフィリアやフローラ達だけでも入れるけどね」
「初めては、シリウス様と一緒がいいです」
「私もです」
そうなると、もうしばらくこちらは出番が無さそうだが……まあ、焦ることもないか。
俺としては、そろそろ一人でお風呂に入りたいのでこちらを密かに利用しようかと思っていたが、フィリアやフローラの意見を聞いた後で一人で入るのは違うと思うので、俺も我慢とする。
領主館でも温泉には入れるし、あと数年の我慢なら何とかなるだろう。
とはいえ、サウナなどは別荘にしか用意してないので、サウナ程度なら入ってもいいかな?
サウナ自体、経験は無かったのだが、どのようなものかは知っていて、実際に作ってみると中々良さげだったので是非とも利用したいものだ。
水風呂とかも良かったよね。
サウナの後のシャワーか水風呂、なるほど、汗を流すというこの流れがいいのかと思ったが、まあ、それはおいおいまた体験出来ればいいかと思うことにしておく。
そんな感じで、婚約者二人に別荘内を軽く案内して、お風呂場も案内するが……俺と好みも近いのか、内装なども気に入ってくれたようなので、これなら皆でのんびり出来そうだとホッとする。
このまま、流れで混浴……なんてことには、流石にならなかったが、結婚前なのでその辺はある程度弁えないとね。
何にしても、フィリアとフローラも気に入ってくれたので、こちらの視察ももう少し頻度を上げるようにしようかな。
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