第77話 姉妹の今後
ゆっくりと、瞼を開けると、そこは先程入った隠し部屋の奥であった。
やはり、女神様と話してる時は別の空間に飛ばされてるようだ。
まあ、今更だけど、女神様やっぱり凄いね。
そんなことを思いながら、部屋を出ようとすると、ふと祭壇に先程まで無かったものが置かれているのが見えた。
所謂、懐中時計と呼ばれそうな開閉式のお洒落なそれは、裏蓋に俺の今世の名前が掘られており、恐らく女神様からの贈り物だろうと推察出来たので手に取って確認してみる。
普通の時計だろうか?
そんなことを思っていると、時計の脇に時間調整の以外のボタンがあるのが確認出来た。
試しに押してみる――と、そこで俺の身体に光が走った。
眩しい光は数秒で消えるが……その後に目を開けるとやけに景色が高く見えるように思えた。
え?今世の俺こんなに高かったかな?
そう思っていると、服装まで良く見れば違うことに気がついた。
というか……これって、前の英雄時代の前世の服装なような気が……
思わず、空間魔法で手鏡を取り出すと、そこには前世の時の渋いナイスガイ(なお、当社比)な自分が映っており納得する。
多分、先程の時計の効果なのだろう。
しかも、武装まで同じものになっていて、剣も鎧も神聖属性を帯びてる、所謂神器であった。
心做しか、前世より力が溢れてくる気が……これが、プラシーボ効果なのかと思っていると、時計の画面が真っ白になって女神様のお顔がそこに写った。
『驚きましたか?』
「え、ええ……これは一体……」
『ふふ、私が奮発して作った『変身時計』です!』
ドヤ顔が可愛い女神様によると、切り札として俺の最前最高のステータスの姿になれる魔道具……というか、神器がこれなのだそうだ。
今世の俺は魔力特化で、身体は前世の方が強いそうだ。
なので、その両方を良いとこ取り出来るチートアイテムがこれなのだそうだが……こんなもの貰っていいのだろうか?
『私の気持ちを知って欲しかったんです。女神のワガママです』
そうお茶目に告げる女神様。
「ありがとうございます」
本当に何から何まで……これを使わないことを切に願いつつ、俺はチェーンで腰にお洒落に懐中時計を仕舞う。
ちなみに、解こうと思えばいつでも変身は解けるし、懐中時計さえあればいつでも変身出来るらしい。
あと、地味にこの懐中時計を通してなら女神様とお話出来るそうなのでそれが一番嬉しかった。
まあ、一度使うと再使用に少し時間が必要らしいが、敬愛する女神様に会えるのは素直に嬉しい。
素敵な贈り物にホクホクしつつも、部屋を出て2人の元に戻る。
すると、先に駆け寄ってきたのは、妹のセリアの方であった。
「ありがとうね、シリウスくん!」
余程嬉しかったのか、俺を抱きしめるセリア。
流石はオーバーテクノロジーのホムンクルス。
まるで本物のように柔らかい感触に包み込まれる。
「シリウス、ありがとう。本当に……」
その後ろからスフィアの声がするが、セリアに抱きしめられてるせいで全く見えない。
「えっと……まあ、気にしないで。ただの俺のお節介だし」
「ううん、そんなことないよ。お礼は約束通り私でいい?」
そんなことを言うスフィア。
……そういえば、そんなこと最初に言ってたな。
Sランク冒険者のスフィアが俺の元に来てくれるのは、領主としても助かる。
でも……
「別に、無理強いはしないよ。セリアと一緒に過ごしたいでしょ?」
せっかく再会した姉妹なので、あまり野暮なことは言えないとそう聞くと、一緒に話を聞いていて、未だに俺を離す気配のないセリアが首を傾げた。
「あれ?私も一緒じゃダメ?」
「えっと、セリアもいいの?」
「もちろん!なんか、生前より元気だしね!」
本人曰く、生きてる頃は病弱だったらしい。
まあ、ホムンクルスの身体なので、普通に考えて病気なんて無かったりする。
ホムンクルスって便利だね。
「じゃあ、セリアもスフィアと一緒に俺の領地に来てくれるってことでいいかな?」
「うん、なんなら側室でもいいよ?」
「……それは、まあ、本気でその気があったらということで」
姉のフレンドリーさを遥かに凌駕するこのグイグイくる感じ……なんとなく、セシルを彷彿とさせた。
思えば、セシルもこうしてグイグイくるタイプであった。
名前が似てると性格も似るのだろうか?
なら、産まれてくる子供皆にフィリアか女神様の名前を付ければ世界は平和になるかもしれないね。
そんなことを考えながら、俺たちは帰路につくのであった。
まあ、とにかくあれだ……今日は頑張りすぎたので、明日からダラけるとしよう。
スローな、ライフこそ至高だしね。
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