第45話 男湯

「はぁ……気持ちいいね」

「そうですね」


フィリアがセシルとシャルティアを連れてお風呂に向かったので、俺はのんびり待ってようと思っていた……うん、ホントだよ?


覗きとかそういうことはしないよ?


間違って女湯に踏み込んだりとか、羨ましけしからんことはしないつもりで……そう、まるで賢者のような心持ちでいたのだが、俺は現在、何故か兄様に連れられて男湯で湯船に浸かっていた。


「たまには兄弟でのんびりとどう?」と、誘われれば断るような弟でない俺は頷くしかない。


「しかし、シリウスは便利だね」

「物じゃないですよ?」

「分かってるよ。ついね」


くすりと笑うレグルス兄様は、きっと女性なら見惚れているであろうお姿だが、残念ながら俺は男なので兄様のイケメンぶりを再確認しただけだった。


そんな俺なのだが、今現在は密かに隣の女湯へと夢を馳せることにしていた。


フィリアの未熟な果実と、セシルの着痩せしてるスタイルと、シャルティアの程よい筋肉のついた素敵なお姿。


ふむふむ、良きかな良きかな。


「ところで、シリウスは側室はもう増やす気はないの?」


そんな想像をして1人満足していた俺に、そんなことを言うレグルス兄様。


「兄様はどうなんです?」

「僕はもう要らないかなぁ……というか、2人でも大変なのに増えるのは困るね」


我が兄は父に似て好色とは程遠いようだ。


俺もそうだけどね。


……嘘じゃないよ?


好きな人にしか食指が動かないからさ。


「ラウル兄さんも、僕と同じ感じみたいだね。見た目は好色でも違和感ないのに」

「まあ、確かに」


我が兄ラウルは見た目だけなら、何人も女性を侍らせてても不自然ではないが、彼も奥さん2人で十分らしい。


「そんな暇があったら、稽古だろ!」と、笑っていたのを見ると、国王になってからレグルス兄様が苦労しそうだが、弟としては頑張ってと応援するしかない。


「それで、兄様達にそういう話が来てるって事ですか?それで、俺にある程度押し付けたいと」

「まあね」


正妻、側室含めて2人では少なすぎる!……という名目で、貴族連中が兄様達に娘を差し出したいのだろう。


ただ、そんな気も毛頭ない兄様達なので、俺にその気があればどうだということだろう。


「いえ、政略結婚はちょっと……」

「まあ、だろうね」


ここで、無理やり押し付けない所が、我が兄や家族のいい所。


無論、俺だって必要なら政略結婚もしたかもだけど、今のところ俺にとって政略結婚するだけのメリットのある人なんて居ないだろうし、それに万が一格上の気の強い令嬢でも来たら、面倒そうだ。


フィリアの家柄より格上で、じゃあウチの娘が正妻ですねとか、言われたら躊躇なくその貴族を殴ってしまいそうだ。


その辺が貴族の面倒な所だが……まあ、家族も王位を継がない上に、色々とアイデアでお金を集めた俺を縛るような真似はしないだろう。


その辺が、今世の家族の優しいところだ。


うん、今世最高だね。


「はぁ……まあ、最低もう一人迎えないとかなぁ……でも、面倒だし、別の方法で回避するかな。そういえば、シリウスはウチの娘娶る気はない?」


1人で何やら物騒なことを言っていた兄様だったが、唐突にそんなことを言い出した。


弟に娘を勧める兄……凄いな、流石異世界と感心しつつも俺は苦笑して言った。


「普通、可愛い娘の嫁ぎ先はもっと厳選しません?」

「まあ、そうなんだけど……親としてはローザみたいに国外に行かれると寂しいから、シリウスの所に居てくれた方が安心なんだよね」


転移魔法でいつでも会えるというのが理由らしい。


レグルス兄様も何だかんだで娘ラブなんだろう。


「政略結婚は仕方ないかもですが、2人には恋愛結婚をさせてあげたいという叔父心もあります」

「それなら心配ないんじゃない?『おじちゃまとけっこんする!』って、ティファニーが言ってたし、スワロも頷いてたしね」


まあ、それは幼い子供の定番だし、本当に好きな人はそのうち現れるはず。


……女神様が初恋な俺がそれを言えるかは別だよ?


仕方ないじゃん、そんな暇も無く死んだんだし。


だからこそ、今世は恋愛を楽しむのだ!


あ、モヤモヤ展開とか要らないから、俺がストレートに愛を伝えるだけだけどね。


好きを好きだと言える世界……贅沢だよねぇ。


「まあ、考えておいてよ。2人のこと嫌いじゃないでしょ?」

「まあ、可愛い姪ですからね」

「ふふ、シリウスが叔父さんって凄く似合わないね」


まあ、自覚はある。


若すぎるし、ティファニーとスワロだと兄妹とか従兄妹と言う方がしっくりくるくらいだ。


そうして、兄様と色々と話すが、お疲れなのか時々お湯の気持ちよさに目を閉じそうになっていた。


まあ、前倒しで仕事してたんだし、仕方ないか。


そんな兄を気遣いつつも、お風呂から上がった後に見れる湯上りバージョンの婚約者3人を見れることにワクワクする俺は結構酷い奴かもしれない。


いいんだよ、欲望には素直にね。


まあ、声には出さないけど。


声に出すほどの勇気もないし、そういうのは言わずに楽しみつつ堪能する。


特に、フィリアの湯上りはレアなので、結婚後に一緒にお風呂に入るのが益々楽しみになる。


あと数年の我慢だね。

















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