第93話 【3巻発売記念SS】ミス・ミューズ代表決定戦(番外編)、トトカルチョ編
《注意》
このお話は、今までの『カクヨム版 彼女が先輩にNTRれたので、先輩の彼女をNTRます』の続きではありません。
『文庫版 彼女が先輩にNTRれたので、先輩の彼女をNTRます』に関連するお話になります。ご容赦下さい。
雰囲気を楽しんで頂ければ幸いです。
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ゴールデン・ウィークが開けて大学の授業が始まる初日。
城都大学はとある話題で沸き立っていた。
「おい、見たか? 朝のトリッターのコメント」
「見た見た。アレだろ、竜胆朱音の『桜島燈子とどちらがミス・ミューズ代表になるか、勝負する事になった』ってヤツ」
「もうバッチバチだよな、竜胆朱音」
「なにせ二年連続のミス城都大優勝者でありながら、『真のキャンパス女王は桜島燈子』って、言われ続けて来たもんな。当然、腹も立つだろ」
「それに対して、桜島燈子の方はどうなんだ?」
「勝負を受けたんだ。燈子だって戦う気満々だろう」
「そりゃ見ものだな。『二年連続ミス城都大の竜胆朱音』VS『真のキャンパス女王と言われる桜島燈子』か」
廃止になったミス城都大に代わるイベント『ミス・ミューズ』。
その九人の中から代表者、クイーン・オブ・クイーンを選ぼうと言うのだ。
しかもツートップである二人が『ミス・ミューズ代表の座を賭けて勝負』となれば、話題にならないはずがない。
その一つが学生が勝手に始めた『代表決定戦トトカルチョ』だ。
最初はお祭り好き・賭け事好きの連中が「誰が代表となるか」を予想していただけだったが、それがいつしか賭けの対象となり、さらに大学とは別に独自サーバを立てた事により、一気に広がったのだ。
既に一千人近いアカウントが作られていた。
そんな中、一色優と同じクラスの男子三人が、頭を寄せ合っていた。
「やっぱり本命は、二連続ミス城都大の竜胆朱音に決まりだろ。今の所、SNSのフォロワー数もトップだしな」
眼鏡をかけた背の高い男・西浜が、スマホに映した「ミス・ミューズ九人のリスト」を見ながらそう言う。
「そうか? 俺は絶対に桜島燈子だと思うよ。なんと言っても彼女には知性と気品がある。それに加えてあのルックスとスタイル。もう完璧じゃん」
そう言ったのは同じく背が高く目の細い男・山内だ。
それにすかさず西浜が反論する。
「いやいや、絶対に竜胆朱音だって。だって既にいくつものアパレル会社とタイアップもしてるしな。桜島燈子とは知名度が違うよ。色気も竜胆の方がある」
山内も身体を乗り出すようにして、さらに反論する。
「桜島燈子だって最近はイメージ・デートとかコスプレとか、普段とは違う可愛い写真とかいっぱい上げてるんだよ!」
「いや、竜胆だ!」
「絶対、燈子だ!」
そんな二人のやり取りを聞いていたもう一人の男、二人よりは小柄で小太り気味な体型の斜藤が口を開いた。
「その二人が代表に一番近いのは間違いないけど、俺はやっぱり彼女を推したいねぇ」
「「彼女? 誰だ?」」
西浜と山内が同時に斜藤を振り向いた。
「蜜本カレンちゃん。彼女こそ萌えを体現した新たな女神に相応しいと思うんだよね」
そう言って斜藤は手にしたスマホにカレンのSNSのページを表示した。
「ホラ、見てくれよ。この写真」
西浜と山内は、斜藤が差し出したスマホを覗く。
そこにはカレンが『バスルームの曇りガラスの影から半身を覗かせる写真』が写っていた。
一応、身体の大部分は曇りガラスで隠れているが、顔と肩と太腿から先がガラスドアの外にはみ出している。バスト部分ももう少しで見えてしまいそうだ。
タイトルには『お兄ちゃん、バスタオル取ってぇ』と書かれている。
「おお、これは中々……」
「ギリギリまで攻めてるなぁ」
二人が食い入るように画面を見つめる。
そんな二人を見て、斜藤はニヤリと笑う。
「そう、そこがカレンちゃんの魅力なんだよ。小悪魔的に男が萌えるツボを押さえている点。見えそうで見えない。でも見たい。そんな写真が一杯あるんだ」
斜藤はマンガなら「じゅる」と言う擬音が付きそうな、下卑な笑いと共に解説する。
「た、確かに……」と山内。
「これは竜胆朱音や桜島燈子には無い魅力だ」と西浜。
それを聞いた斜藤は自慢げな顔になる。
「だろ? この『あなたの妹シリーズ』の写真だけじゃない。『ペット・シリーズ』にはアニマル水着を着たHっぽい写真が一杯あってね。見る者の想像力を掻き立ててくれる」
そう言って斜藤はカレンの他の写真を映し出していった。
その中には『前屈みでTシャツの胸元が開き、バストが見えそうな写真』『Tシャツごとずぶ濡れになってブラジャーが透けている写真』『パジャマ姿でパンティが一部見えている写真』などもある。
「こう言う微妙にHな妄想を掻き立ててくれるカレンちゃんこそ、萌えを真に理解した新しい女神に相応しいと思うんだ」
斜藤の熱弁に二人は黙って頷いた。
「しかし……」と西浜。
「一色の奴、このカレンの元カレで、しかも桜島燈子とホテルで一夜を共にしたって噂だろ? 事実なら許せんな」
「まったくだ。アイツには天誅を下すべきだろ」と山内。
「それは否定しないが、今は一色を利用してトトカルチョで儲けるべきじゃないか?」
斜藤の言葉に、再び西浜と山内が深く頷いた。
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