魔神
ひとまず、戦うが……どうやって?
「おい、エリゼ。どうやって戦うんだ?」
相手は二十メートルを超える巨体だ。
コアを破壊と言っても、魔神剣も届気はするが、威力は下がる。
「なに、簡単な話だ。腕を駆け上がっていき、胸に剣を突き刺すだけだ。もしくはシンクとやらに乗り込んで空中からだな。カグヤお嬢様は頭の部分にいるから、その辺は安心していい」
「相変わらず無茶をいう……が、それしかないか」
二本の剣を構えて、攻撃態勢に入る。
「私たちもやるぞ。あくまでもサポートだ。トドメはクロウがやれ」
「わかりましたよ、もう何でも良いです」
「ん? どういうことだ?」
「ああ、言い忘れていたが……おそらく、お前の持っているアスカロンとアロンダイトは古代文明の遺産だ」
「……初耳なのだが?」
「今言ったからな。というか、ムーンライト家に伝わる宝剣ということはそういうことだろう」
「まあ、たしかに……道理で、なんでも斬れるし折れないわけだ」
「コアを破壊できるのは、おそらくその剣だけだ。だからこそ、ムーンライト家に伝わっていたのだろう」
「姉上! 奴が動きます!」
「私達に反応したか……ではいくぞ!」
それぞれが散会し、各々で魔神へと迫る。
それに気づいた奴は、その巨体から拳を振り下ろしてくる!
「チッ! まるで山が降ってくるようだな! シンク!」
「クルルー!(アイサー!)」
横からシンクが来るので、それに流れるように飛び乗る。
「急げ!」
「クルル!」
次の瞬間——轟音と共に爆風が襲ってくる!
「くっ!?」
「クルルー!?(うわっ!?)」
なんとか拳を避け切ったはいいが……。
「おいおい、地面が……」
空から見下ろすと、拳が降った場所は大きい穴が空いていた。
「みんな平気か!?」
(平気だよ! エリゼさんもあいつも生きてるよ!)
(よし……ハク! エリゼとあいつを乗せて援護してやれ! 俺は上からやる!)
(了解なのだっ!)
下の方をみると、エリゼとハデスがハクに跨るのが見える。
あれでハクが避けて、あの二人は攻撃に専念できるだろう。
「シンク! 俺をコアの近くに!」
「クルー!(あいっ!)」
シンクが動き出そうした瞬間——何かを感じた。
「シンク! 避けろ!」
「クル!?(パパ!?)」
戸惑いつつも、シンクは上昇する。
すると次の瞬間——奴の目から魔力の光線が放たれた。
それはどこまでも飛んでいき、空の彼方へ消えていった。
「まずいな……」
今の俺ならよくわかる。
あれにどれだけの魔力が込められているか……。
さっき感じた異変もわかった。
どうやら魔族化したことにより、感覚的にあいつの魔力の流れが見えているようだ。
だから、撃たれる前に気づくことができたというわけだ。
「クルル!(パパ!次々くるよ!)」
「シンク! 避けるのに専念しろ!」
俺の言葉通り、シンクは必至になって光線を避け続ける。
「クルルッ!(パパ!)」
「おう! ウオォォォ——ラァ!」
避けきれない光線を両腕の剣で受け止め——かき消す!
「クルルー!(すごい!)」
「気をぬくなっ! そう何発も耐えられるわけじゃない!」
チッ! 俺の身体は以前より頑丈なはずなのに……腕が痺れてやがる。
「クルル!(わたしもっ!)」
俺が弾くのを見て、シンクもブレスで対抗する!
「おい! お前の威力では……なに?」
シンクのブレスは以前の威力とは違い、奴の光線を打ち勝てないまでも弾くことに成功する。
「クルルー!(いけそうな気がしたのっ!)」
「どういうことだ?」
というか、見た目や魔力の性質が似てる気がする……。
「とりあえず、まずは奴の攻撃方法を潰していかなくては」
(ハク! 奴の足を削れ! 森の王者の力を示してみろ!)
(了解なのだっ! シンクにばっかり良い格好はさせないのだっ!)
「クロウ! 私達が足をやる! まずは手足をもぐ!」
下からエリゼの声が聞こえてくる。
「わかった! ハク! 俺の魔力を持っていけ! 今なら遠慮はいらん!」
俺の身体からハクに魔力が行き渡る……そして。
(グルルルー!(いっ——けぇぇぇ——!!
ハクから特大のウォーターブレスが解き放たれた。
その威力は凄まじく、奴の足の膝から下を切り取った。
「圧縮された水は、鎧さえも切断するという話は聞いたことがあるが……」
まさか、太さ五メートルを超える足を切断するとは。
しかも普通の攻撃では、弾かれるようなものに。
「ハデス! このままでは魔族の名折れだ! 私に合わせろ!」
「わかりましたよっ!」
「「魔闘気全開!!」」
赤いオーラが空まで届く。
「「千年斬り!!」」
二人の息のあった斬撃が飛んでいき、バッテンを描くように足に吸い込まれる。
次の瞬間——奴の足元が崩れ去る。
しかし、このままではまずいことに気づく。
(ハク! このままではうつ伏せに倒れてしまう! 仰向けに!)
(オイラに任せるのだっ!)
地上をみると、ハクが助走をつけて走り出している。
上にいる二人もそれぞれ魔力を全開にして、攻撃態勢に入っている。
そしてそのまま——奴に体当たりをかました!
「よし! バランスを崩した! シンク!」
「クルルー!(アイサー!)」
シンクがレーザーを潜り抜け、コアの部分に近づく!
「カグヤァァァ!」
シンクから飛び出し、そのコアへとアスカロンを突き刺す。
……そして、そのまま砂煙と共に地面へと倒れこむ。
「ゴホッ! ゴホッ!」
「クロウ! 平気か!?」
「人間とは思えん動きと魔力だな……いや、もう人間ではないのか」
「知らん。どうだっていい。カグヤが救う力があるのならそれだけで良い」
「ふっ……良いことを言う」
「それにしても……人口生命体だからか、なにも反応がないのが気持ち悪いな」
倒した実感が湧かない。
「おかしい……これで良いはず。何故、奴の魔力は止まっていない?」
エリゼに言われて意識して見てみると……。
確かに、魔力はまだ流れているし、緑のふわふわも止んでいない。
「姉上——グハッ!?」
「ハデス!?」
「誰だ!?」
なんだ、今のレーザーは!?
威力、速さ共に桁違いだったぞ!?
「わたしは、もうどうだって良い……」
土煙が止んだ後立っていたのは、アスカロンを構えたカグヤだった……。
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