会談にて
無事にお墓参りを終えた俺は、三人を館まで案内する。
そして門の前にカグヤにエリゼ、ヨゼフ様とアラン様がいたのだが……。
「カエラ殿!?」
「カエラさん!?」
「これはこれは、驚きましたね」
三人が驚いているのも無理はない。
俺とカグヤとて、最初見たときは驚いたものだ。
「むっ? 私を見ている?」
「すみません、サラ姉さん。貴女は、母上にそっくりなのです」
「そうか、そういえば言っていたな弟よ」
「クロウ? どういうことじゃ?」
「まずは、自己紹介からした方が良さそうですね」
「では、私から……まずは、会談の場を快く提供してくれたヨゼフ殿に感謝を。私の名はヘーゼル-マルグリッド、マルグリッド王国の女王です。何度かお会いしたことはありますよね?」
「いえ、こちらも娘が代表者なので。ええ、もう十年ほど前になりますか」
「では、私ですね。私の名は、サラ-ランスロット。そちらの国でいうと、マルグリッド王国の公爵家当主に当たります。そして分かりやすく言いますと、クロウ殿の母上とは従姉妹の関係になるそうです。ちなみに、隣にいるのは護衛のゼトです」
「よろしくお願い申し上げます」
「なんと……似ておるわけですな」
「ねえねえ、とりあえず中に入らない?」
「父上、カグヤの言う通りですよ」
「うむ、そうじゃな。では、部屋へと案内いたします」
全員で館に入り、客間にて三対三で座る。
ちなみにエリゼは、ハクとシンクと遊んでくると言って出て行った。
二人共……無事に生きろよ。
俺は一人席を立ち、護衛として後ろに待機する。
その隣には、ゼトさんもいる。
こっから先は、俺の仕事ではない。
黙って、カグヤを見守るとしよう。
◇◇◇
~カグヤ視点~
クロウが私に求めていること……。
私がしなくてはいけないこと……。
それについてはわかってる。
国が割れないように、私のために色々としてくれる。
そもそも、クロウがいなかったら、今の私はいない。
これ以上、クロウにばかり苦労かけちゃいけない。
私がしっかりしないと……新しい命のためにも、平和な世の中を作らないと。
「では、まずは何から話しましょうか?」
慣れているからなのか、ヘーゼルさんが声を上げる。
「うむ……ここにいる者は、それぞれに縁がある者達ですな。政治的な回りくどい言い方はやめにしませんかのう?」
「ええ、そちらの方が良さそうですね。いずれ身内になる予定ですから」
く、クロウと結婚したら……そっか、この方達とも身内になるんだ。
えへへ……いけない、今はそんな場合じゃないわ。
「では、カグヤ。お主が話すと良い。ここからは、わしとアランは黙っておる。我が娘としてではなく、時期女帝として話すと良い」
「はい、お父様。では、ヘーゼル様」
「はい、なんでしょう?」
「私たちの国と対等な同盟を結んでもらえますか?」
私は未熟だ。
政治の駆け引きなんかわからない。
だったら、私は私なりのやり方でやるしかない。
「へえ?」
「叔母上、女王の顔になってますよ?」
「ゴホン!……いけないわね、つい。久しく真っ直ぐな意見など聞いたことがなかったから」
「どうでしょうか? 税金を納めることを無くし、これからは魔の森から国を守る隣人として手を合わせてくれますか?」
隣国が滅んだことで、あの地は魔の森の魔物達が徘徊するようになった。
今では人の住めるような土地ではない。
いずれ、魔の森と同化していくという見解だ。
「気持ちの良い言葉ですね。今までのことを水に流せと?」
「もちろん、今までの不当なお金はお返しします。しかし、そちらも実際に助かってる部分もあったと思うので、それ以上のお金はお渡しできません」
「ふふ、そうね」
「叔母上!!」
「あっ——ごめんなさい!」
「いえ、大丈夫です。これだけは、しっかり言うようにと決めてきましたから」
「では、有り難く。こちらとしては問題ありません。むしろ、利点だらけです。お願いしてもいいですか?」
「はいっ! ありがとうございます!」
「ふふ、たまには良いわね。では、この地はどうなさるの?」
「えっと?」
「そうね……今は、良いわ。私たちの次の代を考えましょう。この地と、帝国は貴方の血筋で染まることになるわね?」
そっかぁ……そういうことね。
「……いずれまた、マルグリッドを属国にしようとしてくると?」
「ええ、だから提案です。というか、アランさんと言いましたか?」
「へっ? わ、私ですか?」
「こら、シャキッとせんか」
「は、はい……ええ、私がアランです。一応、次期当主ということになっております」
「婚約者の方はいらっしゃるの?」
「い、いえ、それが……中々決まらないのです」
お兄様はルックスも性格も悪くないんだけど……。
少し女性が苦手というか、奥手な部分があるから。
引っ張っていってくれる女性なんかが合うと思うわ。
「では、私の下の娘と結婚して頂けますか?」
「はっ?」
「なるほどのう」
そうすれば、三箇所で血が交わることになると……。
「それは良い考えですね」
「カグヤ!?」
「お兄様、意中の女性がいるのですか?」
「いないさ……いたらとっくに結婚してるさ」
「なら会ってみるだけしてみたら? 無理強いはしないですよね?」
「ええ、もちろんよ。じゃじゃ馬娘ですが、器量は保証しますわ」
「私に似ているし、慣れ親しんだ顔なのでは?」
「サラさん似ってことは、カエラさん似ってことかぁ」
それなら美人さんに間違いないわね。
「お、お受けします!」
「へっ? お兄様?」
「良かったわ。あの子も貰い手がいなくて……」
「では、ここからはわしと話すことにしますか」
「ええ、そうですね。カグヤさん、これからよろしくね。なるべく、仲良くやっていきましょう」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
そして、私は力を抜いて椅子にもたれる。
みんな凄いなぁ……いつも、こんなことをしてるんだ。
私は経験する前に、あんな状況になっちゃったから。
これから、少しずつでも学んでいかないと。
……このお腹の子のためにも。
クロウには、いつ言ったら良いのかな?
よ、喜んでくれると良いな……。
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