作戦会議

 俺が風で涼んでいると……。


「クルルー!(パパー!)」


「うおっ!? びっくりした……」


 バルコニーの目の前にシンクが現れた。


「団長!」


「なるほど、城からではなく上から来たか」


 ナイルがバルコニーに降り立つ。


「ええ、こっちの方が早いと思いましたので。おそらく、時間をかけない方がいいですから」


「その通りだ、さすがは俺の副官だな。シンク、城を壊さないようにとまれるか?」


「クルッ!(できるよっ!)」


「では、この近場で待機しといてくれ。場合によっては、すぐに出発することになる」


「クルルー!(はーい!)」


「いい子だ、シンク。ナイル、こっちに来てくれ」


「はっ!」


 ナイルを連れ、部屋の中に戻る。


「あっ、ナイルさん!」


「どうもです、カグヤさん」


「こいつが、俺の右腕のナイルという者だ」


「初めまして、近衛騎士団副長のスレンと申します」


「ご丁寧にありがとうございます、私がナイルと申します」


 ひとまず、お互いに手短に自己紹介をすませる。


 俺とカグヤ、ナイルとスレンで、これからのことを話し合う。


「さて、話はどうなった?」


「えっと、まずは港町の救援が最優先かなって」


「なるほど、今も戦っているかもしれないか。しかし、どっちの味方をする?」


「それについては、私から……攻めている兵士達はならず者で編成されていると思われます。それを拒否したものは、牢屋に入れられたり、処刑されていますから」


「チッ、胸糞悪い。じゃあ、攻めている連中を始末した方がいいか?」


「ええ、そちらのが合理的かと」


「なるほど、恩に着せる事ができますね。その後の統治にも役に立ちそうです」


「へえ……いい副官をお持ちですね?」


「ああ、俺もそう思う。言い辛いことを言ってくれる奴は貴重だからな」


「むぅ……よくわかんない」


「カグヤはそれで良い。適材適所というやつだ。あとは?」


「そういうものなのね……さっき言ってたのは、国境にも救援を送らなきゃって」


「しかし、王都を空けるのもまずいだろう? まだ落ち着きがない。暴動でも起きたら目も当てられん」


「おっしゃる通りかと。戦力を分ける必要があります」


「言っておくが、俺はお前達を信用していない」


「もちろん、わかっております」


「それを込みで作戦を練るとしよう」


 すぐに地図を広げ、戦力の確認をする。


「では、スレンが話を進めてくれ」


「えっ? ……良いのですか? 」


「お前が一番詳しそうだからな。それに信用はしないが、手を組むことは出来る」


「なるほど、合理的ですね。わかりました、ではご説明をさせて頂きます」


(ハク)


(どしたのだー?)


(変な動きをしている奴がいたら知らせろ)


(了解なのだっ!)


 よし、これで話に集中できる。


「クロウ殿?」


「おっと、すまん。では、始めてくれ」


 全員の視線が地図に向く。


「まずは、この国は三方向に注意を払ってました。独立気質の高い港町、国境を越えて来ようとする隣国、良い関係とは言えない辺境伯領。幸いと言って良いのかわかりませんが、隣国は滅びました。あとは魔物を排除して、防衛線を張っていけば問題ないでしょう」


「そうか、すでに村々も滅びてしまっているか」


「残念なことですが……なので、敵を引きつけつつ、防衛ラインを下げれば良いかと」


「えっと……国土が広過ぎると、治めるのも大変だから?」


「そういう面もあります。今、我が国には指揮を取れる人材が不足してますから」


「なるほど……そして団長、カグヤさん、辺境伯領は心配いらなそうですね?」


「ああ、敵対することはないだろう」


「お兄様が多分、この後こっちに来ると思うわ」


「そうなると、港町の救援と、国境への救援ですね」


 そっから話を煮詰め……ひとまず決定する。


「では俺とシンクが港町を制圧してこよう」


 それならひとっ飛びでいける。


「じゃあ、私が住民の見回りと説明ね!ハク、よろしくねっ!」


「グルルー!」


 カグヤの護衛にはハクをつかせる。

 さらには、連れてきた兵士の半分を預ける。

 これで不意打ちにあっても対処できるだろう。


「では、私が国境へ。残りの近衛騎士団を編成し、救援に向かいます。それがせめてもの罪滅ぼしです」


「では、団長。私も兵士の半分を連れて一緒に参ります」


「ナイル、任せるぞ? ついでに、スレンもな」


「はっ!」 「はっ!」


「カグヤ、無理はするなよ?」


「うんっ! 平気よっ!頼りになる子がいるもの!」


「グルルー!(オイラがついてるのだー!)」


「そうだな。ハク、お前に俺の大事なカグヤを預ける。全てをかけて守り抜け」


「グルルゥゥゥ——!!(御主人様の信頼に応えるのだぁぁ——!!)」


 よし、これで準備完了だ。


 俺はバルコニーに出て、声をあげようとするが……。


「クルルー?(終わったー?)」


「ああ、終わったよ。良い子だ、シンク。呼ぶ手間が省けたな」


「クルル!(わたしも聞いてたもん!)」


「ならば、説明はいらないな。さあ、行くぞ」


 バルコニーから飛び出して、シンクの背中に乗り込む。


 すぐさま、大空に羽ばたいていく。


 そして、俺たちは港町へ急ぐのだった。

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