ハクの新しい生活~ハク視点~

 オイラの名前はハクなのだ。


 クロウという、途轍もなく強い人間に名付けられのだ。





 オイラは森の王者だったのだ。


 同族の者や、ドラゴン以外は敵じゃなかったのだ。


 ……ただ、調子に乗って眠っていたところを、人間に捕らえられてしまったのだ。


 むむー……一生の不覚なのだ。


 まあ、餌は出てくるし、たまに人間が挑んでくるから退屈はしなかったけど。


 そんな時……凄まじいオーラを感じる人間に出会ったのだ。


 同族の大人以上の強さ、ドラゴン以上の強さを感じたのだ。


 ……実際に戦ったら、その通りの強さだったのだ……。


 オイラの両腕を、軽く受け止めて……。


 オイラのブレスを素手で弾くなんて……そんなのは初めてだったのだ。


 しかも、オイラの巨体をぶん投げたのだ。


 ……これは負けを認めるしかなかったのだ。


 どうやっても勝てる気がしなかった。


 それどころか、感服してしまったのだ。


 この強い人に従いたい!と思ったのだ。


 こうして、オイラはご主人様を得たのである。






 オイラの仕事は……ご主人様の右腕なのだ。


 ご主人様のつがいの護衛を命じられたのだ。


 これって……頼られてる!?


 よーし!オイラはりきっちゃうぜ!


 それからのオイラは、常にカグヤさんの側にいたのだ。


 ご主人様から、この人を好きだという気持ちが伝わってくるのだ。


 ならば、オイラも守らなきゃいけないのだ。


 あと、カグヤさんのご飯美味しいから好きなのだ!




 そっからは日々は、狩りに出たり巣の中で生活を送っていた。


 そしてオイラは、再び驚愕したのだった……。


 ご主人様が、なんと……上位種であるレッドドラゴンの成体を倒してしまったのだ!


 オイラでは、まだ勝てなかったと思う……。


 もちろん強いとは思っていたけど……人間にもこんな強い人がいるんだと驚いたのだ。


 もしかしたら……ハクドラに伝わる伝説の人の子孫なのかな?


 オイラのお祖父さんが言ってたのだ。


 お祖父さんの代で最強のハクドラが、とある人間に負けたと。


 その人間は二つの大剣を振り回し、魔物共を一掃したと。


 そしてタイマンで、最強のハクドラを打ち負かしたと。


 優しく強く、筋の通ったその男に、当代最強のハクドラが惚れたと。


 その後、その人間についていったと。


 ご主人様を知れば知るほど、その言い伝えの人に似ている気がするのだ。


 ……うーん……まあ、いいか!


 オイラはご主人様が好きなのだ!


 オイラはご主人様のことが、ますます気に入ってしまったのだ!


 うちのボスは強いのだ!


 それだけわかっていれば良いのだ!






 そんなある日のこと……群の仲間が増えたのだ!


 小さいドラゴンで、シンクという女の子なのだ。


 オイラは今、群の守りをご主人様から命じられている。


 つまり……オイラは頼られてるってことだ!


 フフーン!頑張っちゃうのだ!


「グルルー(オイラが先輩のハクなのだ)」


「ピー?(お兄ちゃん?)」


「グルルー……(うーん、まあ……それで良いや)」


「ピー!(お兄ちゃん!)」


「グルッ!?(な、なんだろ?このトキメキは……?)」


「ピー!(あそぼ!)」


「グルル!(ま、任せるのだ!)」


「ふふふ……仲良く遊んでるわね」


「そうだな、ハクは若干戸惑っているがな……」


「……小さい頃を思い出すわね……私、クロウをお兄ちゃんだと思っていたのよ?」


「俺も妹のように思っていたさ」


「い、今は……?」


「……愛する女性だよ」


「ク、クロウ……」


「カグヤ……」


 ……これは、ご主人様のイチャイチャタイムなのだ!


「ピー?(お兄ちゃん?どうしたの?ママがドキドキしてるよ?)」


「グルルー(ダメなのだ、今は邪魔しちゃいけないのだ)」


「ピー?(なんでー?)」


「グルルー(ほら、遊ぶのだ)」


「ピー!(わぁ〜い!)」


 ……ホッ……世話のかかるご主人様なのだ!


 仕方ないので、これからもオイラがまとめて面倒を見てやるのだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る