ドラゴンの卵を2人で育てるようだ

 さて……とりあえず、予感は的中した。


 問題はここからだ。


「ブレナさん、これはどうしたら良いですか?」


「まず、見つけるまでの状況を説明して頂けますかな?」


 俺はドラゴンと出会ってから、卵を見つけるまでを説明した。


「……なるほど。まずは、そのドラゴンの卵で間違いないかと。ドラゴンは賢い生き物です。人語も理解できる個体もいるくらいに。なのに、いきなり攻撃をしてくるのには理由があるはずです。ましてや、ハクドラとクロウ様の力を見抜けないわけもない。引けない理由があったのでしょう」


「私達……悪いことしちゃったかな?この子の母親を殺しちゃったわ……」


 ……きっと、自分と重ねてしまったのかもな。

 母親を、早くに亡くしているからな……。


「カグヤ……それは仕方のないことだ。殺らなければ、殺られていたのは俺達だ」


「……うん、わかってるんだけど。私、偽善者だね。魔物がいっぱい死んでるの見てきたのに……」


「いえいえ、お嬢さん。そんなことはありません。我々テイマーも同じ気持ちです。良い魔物もいれば、悪い魔物もいます。そして出会ったからには止む終えない場合も……そして、我々が生きるためにも……」


「……そうですよね、人間同士でもそうですよね……戦争や、貧しさをなくすにはどうしたら良いのかな?あと魔物が人間を襲わなくするには、どうしたら良いのかしら?でも、そうすると冒険者の仕事を奪っちゃうし……」


 カグヤが唸りながら、必死に考えているようだ。

 そうだ……この子は、戦争をやめさせたいと思っていたんだ。

 それもあり、王妃になろうとしていたんだよな。


「カグヤ……それは、後にしよう。俺も、一緒に考えるからさ」


「はぇ?あっ……ごめんなさい」


「いえいえ、心優しいお嬢さんですな。ところで、呼ばれたと言いましたね?」


「え?はい、そうですね」


「ふむ……少し試してもよろしいですか?すでに契約をしている可能性があります」


「ん?どういうことですか?」


「呼ばれたと言いましたね?そして、聞こえたということは波長が合ったということです。ごく稀にあるのです、契約をせずに自然の形で結ばれることが。よほど、気に入られたり相性がいい場合ですね」


「なるほど……カグヤ、どうする?」


「やってみたいわ!それで、私が代わりに育てるの!」


「では、こちらへ」


 俺の時と同じように、魔法陣の上に立つ。

 すると……。


「……やはり、すでにパスが通っています。自然契約を結んでおります。おそらく、自分が生きるためと、お嬢さんを気に入ったので、魔力のパスを出したのだと思います。そして、お嬢さんがそれを無意識に受け取った。だから、声が聞こえたのでしょう」


「あっ、そういうことなのね。でも……この後はどうすればいいのかしら?」


「触れ続けて、魔力を送るといいでしょう。後は声をかけたり、一緒に寝たり。魔力を送り続けることで、何か特別な存在になる可能性もあります」


「……変異するってことですか?」


「ええ、その通りです。ドラゴンの卵は、親から魔力をもらい成長します。それを人間の魔力で育てることで、様々な形で生まれてくるかと。一つだけ言えるのは、必ず強くなるということですね」


「へぇー、そうなのね。じゃあ、本当に私が育てるってことね」


「……俺が送っても良いんですかね?」


「問題ありませんよ。嫌なら拒否して受け取らないだけですから」


「なるほど。じゃあ、交代でやるか」


「……ふ、夫婦みたいね……」


「え?……そ、そうかもな」


「ホホ、新婚さんのようですな」


 ……これは……解決するな。

 カグヤと俺の魔力で育つドラゴン……護衛としてはうってつけだな。


 その後、生まれるまでの簡単な予想を聞いた。


 そしてきちんと謝礼を払い、一度家に帰ることにする。





「さて……後は、どれくらいで生まれるかだな」


「最後に聞いたわよね。もう卵に意思があるから、そんなに時間はかからないって」


「そうだな、大体1週間くらいと。その間は、依頼を受けるのはやめておこう。これを連れてはいけないからな」


「え?でも……あっ!アレよ!アレを受けてたわ!」


「ん?……ああ、なるほど。治療院の依頼があったな」


「そうよ!あれなら平気だわ!クロウが暇だろうから、その間温めるの!」


「そうだな、護衛ならハクがいるし。うん、そうするか。幸い、ドラゴンを売れば良い金にはなる。1週間くらいなら問題ない」


「エヘヘ……2人の子供みたいね……」


「まあ……2人の魔力を卵に注ぐわけだから、間違ってはいないか」


「そ、注ぐ……!ク、クロウのエッチーー!!バカーー!!」


「なんでだ!?どうして殴るんだ!?」


「グルルー……グルァ〜」


 おい!あくびしてないで助けろ!

 やれやれ……みたいな顔をするんじゃない!


 その後、何故か耳が真っ赤になっているカグヤをなだめる。


 一体、俺が何を言ったというのだ?


 相変わらず、女性というのは不思議なものだ。


 そんなことを考えながら、治療院に向かうのだった。

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