カグヤの決意~カグヤ視点~

 この都市ランスロットについてから、色々なことがあったわ。


 楽しいことも、辛かったことも、苦しいことも……。


 クロウと、宿屋で色々なお話をしたり。


 初めてクロウが泣いているところを見たり……。


 こんな私でも、少しは役にたてたかな?


 クロウの辛い気持ちを和らげられたかな?


 クロウは、育った環境のせいなのか、弱音を吐くことが苦手みたい。




 い、一緒の部屋で寝たり……すっごくドキドキしたわ!


 ……最初の日は、気がついたら朝だったけど……。


 多分、クロウが運んでくれたのよね?


 ……クロウは、寝込みを襲うようなことはしないとは思うけど……。


 ね、寝顔見られちゃったわよね?可愛くないって思われちゃったかな?


 で、でも、そんなこと聞けないし……。




 ……ゴホン!あと、冒険にも出たわ。


 クロウと一緒なら、どこでも幸せな気持ちで一杯になる……。


 もちろん、魔物とか怖いけど……クロウがいるもの!


 強くてかっこよくて優しいけど……とっても、鈍感でタイミングの悪いクロウ。


 私が心構えができてない時に限って……か、可愛いとか、言ってくるんだもん。


 すっごく嬉しいのに、上手く伝えられない……。


 もう!クロウのバカ!……でも、バカは私も同じかも……。


 素直になろうとしてるのに、全然上手く出来ない……。


 クロウには助けられてばかりだし、私は何も出来ていない……。


 でも、そんな私にクロウは言ってくれた!


 焦らなくていい、側にいるって……。


 ……よーし!私は、私にできることをしよう!


 そ、それで……いつか、私から好きって伝えるんだから!






 そんなある日、事件が起きた。


 クロウが楽しそうに話していた、ナイルという人が敵に回ってしまった。


 私は彼に捕まり、攫われてしまった……。


 クロウもそうだけど、私も疑いもしなかった。


 そして気がついた時には、ナイルさんとクロウと……その父親と妻がいた。


 私はあの人を、ほとんど覚えていない。


 何故なら、そもそも息子や妻と関わっていなかったから。


 覚えているのは……クロウを冷たい眼差しで見ていたことだけ……。




 クロウは毒をくらい、倒れてしまいます。


 私のせいで!私がいるから!クロウが死んじゃう!


 私はやっぱり、クロウの足手まといなんだ……。


 強いクロウの弱点になっちゃうんだ……。





 でも、そっからのクロウはすごかった……。


 機転を利かし、使い魔を撃退し……。


 口の両端から、大量の血を流しながら……。


 ……そして、実の親をその手で……。


 クロウはなんてことない顔してるけど、そんなわけはない。


 もちろん、元々憎んではいたから、そこまでではないとは思う。


 でも、何も感じないなんてことはないはず……。


 私はクロウを癒してあげたかった……。


 だから……勇気を出して、キスをしました……。


 初めてのキスが血の味だなんて、ロマンのかけらもないけど……。


 そして、素直になるんだ!と自分に言い聞かせます。


 ク、クロウに伝えなきゃ!す、好きだって!わ、私が側にいるって!


 ……ようやく言えた……もう!でも、クロウも悪いわ!全然気付かないんだもん!


 ……で、でも、そのあと……や、優しくキスしてくれから許してあげる!


 ……とっても幸せな気持ちに包まれた後、私は思いました。


 強くならなきゃ……私はクロウと一緒にいたい!ずっと!これからも!


 もちろん戦うのは怖いし、強くなれるかもわからない……。


 でも、クロウを大好きな気持ちだけはある!


 クロウだって、その気持ちで強くなったって言ってた!


 なら、私にだってできるはずよ!


 カグヤ!気合いを入れて頑張るわよ!





 ……ただ、ひとつだけ懸念がある……。


 ナイルさんのことだ。


 妹さんを人質に取られたから、仕方なく裏切ってしまったみたい。


 でも、とてもクロウのこと好きなのは、横にいて嫌でも伝わってきた。


 何より、私をとても申し訳なさそうな目で見ていた……。


 きっと、とても苦しいのだと思う。


 私だって、クロウかお父様かと言われたら……すごく苦しくて、迷ってしまう。


 そして、クロウのこと……。


 あんなに楽しそうに話していたナイルさんを、きっとクロウは許さないと思う。


 ……私のために……。


 でも、それではいけないわ。


 私のために、クロウが辛い目にあうのは、もう嫌だもん……。


 だから……その時が来たら言ってあげるの!


 私だって、これからしっかりする!


 だから、自分を押し殺さないでって!











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