魔獣との戦い

 俺は、今回の件で思い知った……。


 裏切ることない戦力が必要だと……。


 さらに、カグヤを守るのも1人では限界があると……。


 さて……この広さがあれば、そこそこの大きさでも平気だろう。


 早速、行ってみるとしよう。





「カグヤ、ちょっといいか?」


「ん?どうしたの?」


「俺はカグヤを守る。だが、俺にも限界はある」


「うん、わかるわ。身体は一つしかないものね……私が戦えるようになるわ!」


「それは……まあ、約束したしな。ただ、すぐには無理だろう。なので、護衛獣を仲間にしようと思う。あれなら、裏切りの心配もない」


「あっ!この間見た、狼みたいなやつのこと?」


「そうだ。早速、いこうと思う。いいか?」


「うん!いいわよ!デ、デートね!」


 ……いや、嬉しいのだが……そんな雰囲気の場所じゃないのだが?






 ……ほら、こうなった……まあ、役得ではあるか。


「ガルルル!!」


「グァァーー!!」


「キャア!?ク、クロウ……!」


 ただ今、カグヤに腕を組まれている。

 それも、ギューっとだ。

 ……意外と着痩せするタイプだったのか……。

 い、いかん!今は、そんな場合ではない!


「だ、大丈夫だ。俺が付いている」


「う、うん……」


 今、魔物達の檻が並んでいるところを歩いている。


「お気に召しましたのがございましたら、お声をかけてくださいませ」


 ここの支配人の、白髪のご老人のブレナという男性が言った。


「ええ、了解です」


 そこには四足歩行の狼系の魔物や、猫系の魔物。

 鳥系などの魔物がいた。

 ……さすがに、ドラゴンはいないか。

 アレは、オークションでしか出ないらしい。


「ど、どれも怖そうだわ……」


「うーむ、カグヤを守る奴が欲しいからな。カグヤが気に入った奴がいればいいのだが……」


「うーん……わ、私、食べられないかしら?」


「それは大丈夫だ、契約した者には逆らえないからな。そもそも、相手が気にくわないと成立もしにくいしな」


「あっ!あの子!綺麗……!」


 カグヤが指差す方を見てみる。

 そこには白く輝くような毛並みで、優美な姿の虎がいた。


「お客様!あれは無理かと……」


「ん?先約がいるんですか?」


「いえ、アレは誰とも契約ができないのです。あの魔物は、魔の森の王者ハクドラ。自分より強い者、なおかつ気に入った者でないと認めないようです。何名もの人が挑戦したのですが、死人こそ出ないものの、皆大怪我を負いました。なので、三級冒険者以上の方はお断りしております」


「なるほど……アレは強いな。責任はとるので、試してもいいですか?」


「……そうですな。ゼト様のご紹介でもありますし……いいでしょう。そのかわり、誓約書にサインをしていただきます」


「ク、クロウ!だ、大丈夫……?わ、私が綺麗って言ったから……」


「安心しろ、カグヤ。そういう時、俺は他の言葉が欲しい」


「クロウ……ゴホン!……クロウ!!アレを仲間にするわ!!さあ、やっちゃいなさい!!」


「それだ!よし!任せておけ!!その言葉さえあれば、負けるはずがない!!」





 その後、誓約書にサインをし、檻の中に入る。


「では、閉めますね」


「クロウ!頑張って!!」


 そして檻が閉じ、ハクドラと対峙する。


「グルルルゥゥゥ……!!」


「よう、強いらしいな?だが、俺はお前より強い!!」


「グルァ!!」


 体長2メートルほどの奴が、覆いかぶさるように襲ってくる!


「いいだろう!まずは、力比べと行こうか!!」


 全身に魔力を通して、身体強化を施す!


「ガァァァーーー!!!」


「ハァァァーーー!!!」


 奴の両爪と、俺の両腕が組み合う!!


「ガウ?」


「どうした?爪が食い込まないのが不思議か?その程度では、俺の身体には通用しない!」


 組み合った状態からスッと手を離し、素早く腹の下に潜り込む。


「ガウッ!?」


 そのまま、両腕で奴を持ち上げる!!


「オラァ!!」


 そして、檻に向かいぶん投げる!!

 ガシャーン!!という音が響き渡る!!


「ギャイン!?」


「フゥ……さて、次はどうする?」


 奴はよろめきながらも、すぐに立ち上がる。


「ガルルル……!」


「ほう?頑丈だな。いいな、そうでなくては」


「ガァァ………!!」


 奴が前足を踏ん張り、口を大きく開く……なんだ?


「い、いけません!それは避けてください!それこそが、王者と呼ばれる由縁です!」


「ク、クロウ!!」


「ハッ!!いいぜ!!きな!!」


 これで引いたら、奴は認めないだろう。

 俺は右の拳に魔力を集め、左の拳を前に出し、右の拳を引く。


「ゴァ!!」


 奴の口から、水のレーザービームが放たれる!!


 俺は左拳を引きながら、腰の回転を加えつつ、右拳を繰り出す!!


「オラァ!!」


 バチバチバチ!!!と音を立てて、ぶつかり合う!


「グァッ!?」


「ハッ!どうした!?避けないことに驚いてんのか!?舐めるなよ……!」


 右腕に魔力を追加し、拳を振り抜く!!


「セァッ!!」


 そのレーザービームは、そのまま奴にはね返る!


「ギャウン!?」


 直撃をくらい、奴は地に伏せる……。

 まずいな……生きてるか?


「グルルー」


「おっ、生きてたか。ん?様子が変だな……」


 敵意がなくなり、俺の方へ寄ってくる。


「グルルー、グルー、グルッ!!」


「うおっ!?舐めるな!?どうした!?」


「な、なんと!?契約を結ぶ前に、服従しております!!顔を舐める仕草は、貴方をボスと認めますということです!」


「へ?そうなんですか?おい、そうなのか?」


「グルルッ!!」


 さっきとは打って変わり、表情が柔らかく見える……。


「クロウ!すごいわ!えっと……よくやったわ!そ、それでこそ、私の好きな人よ!!」


「おう!見たか!愛のパワー炸裂だ!!」


「あ、あ、愛!?はぅ……」


「グルッ?」


 ……フゥ、どうにかなったようだな。


 正直、レーザービームは危なかった。


 そして、この頑丈さと強さ……これなら、任せられるな。


 これにて、第二目標達成だ。


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