再会……

 まずは、冷静に状況を把握する。


 ナイルは……身体中のあちこちから、血が流れている。


 後ろから追っているのは……全員が、顔以外を覆う黒装束を着ている……暗部の連中か!!


 暗部とは、国の諜報機関であり暗殺部隊でもある。

 孤児などを集め、専門の訓練を強制的に受けさせる。

 そして、洗脳に近い教育を受ける。

 生き残った者は、感情のない人間となり、命令を聞くだけのただの人形と化す。


 それは皇帝の直轄組織である。

 皇帝から大まかな指示を受け、代々の宰相がそれに応じた命令を下す。

 それほどに、宰相というは重要な役職である。

 他国への潜入、国内の情報集め、要人の暗殺。


 ……そして最後に、罪人の始末だ。

 反逆者や逃亡者などが、これにあたる。

 もちろん、暗部の数はそれほど多くない。

 なので、他国に逃亡する成功率も低くはない。

 ただ、重罪などの人間はマークされ、始末される可能性が高い。


 ……つまり、ナイルが追われているのは、俺のせいである可能性が高いということだ!



「ナイル!!こっちへ来い!!」


「た、隊長……?すみません……情報を伝えるはずが……!」


 俺はナイルに駆け寄る。


「どういうことだ!?」


「村々で情報を集め、隊長を探しておりました……隊長に暗部が迫っているとお伝えに来たのですが、私自身も狙われていたようなのです……申し訳ありません、私が連れてきてしまいました……」


ナイルは瀕死の重傷を負いながらも、必死に伝えてきた。


「気にするな!いずれは来ると思っていた!むしろ、助かった!俺の予想より早い!」


 何故、こんなに早い?

 俺の予想では、あと3日の猶予はあったはず……。

 誰かに後をつけられていた?……いや、後ろは常に確認していた。


 いや、今はこいつらを全員始末しなくては!

 ここにいるという情報がいかないように!


「ク、クロウ……!」


「カグヤ!ナイルを治してやってくれ!」


「う、うん!わかったわ!」


「す、すみません……ウゥゥ……!」


「酷い傷!!時間がかかりそうね!」


 よし……さて、俺は奴らを始末しよう。


「おい、貴様ら。1人も逃さんからな?覚悟しろ!!」


 といっても、こいつらに言葉が通じるかはわからないがな。

 まともな教育は受けていないからな。


「シャーー!」


「ケケーー!」


 ……やはり通じないか。

 数は……15人程度か。


「では、こちらから行くぞ!!魔刃剣!!」


 アスカロンを振り下ろし、狙いをつけて剣技を放つ!


「ケケーー!!」


「シャーー!!」


「な!?俺の魔刃剣を受け止めるだと!?」


 なんと、奴らは複数人の斬撃により、俺の魔刃剣を相殺しやがった……!

 さすがは、精鋭揃いの暗部といったところか。

 俺も油断はできない……本気を出す必要があるか。

 できれば、カグヤとナイルの側にいたいが……。

 よし……全力を出して、短期決戦とするか。



 俺は右手にアスカロン、左手にアロンダイトを構える。

 そして、前に出てアスカロンで斬りかかる!

 ギィン!!という音が響く!


「ほう?受け止めたか……だが!!」


 腕に力を込め、剣ごと一刀両断する!!


「ゲェ!?」


 その隙をついて、全方位から敵が迫る!


「ケケーー!!」


「カカーー!!」


「甘いんだよ!!」


 身体を回転するようにして、二本の剣を振るう!!


「ゴハッ!!」


「オゲェ!!」


 アスカロンに斬られた奴は、真っ二つに。

 アロンダイトに潰された奴は、骨が砕ける音がした。


「どうした!?そんなものか!!」


 残りは10人ほどか……。

 俺を囲むようにして、隙を伺っているな。

 味方を犠牲にして、俺の動きを観察していたか。

 厄介な連中だ……恐怖心もないみたいだな。


 さて……まだまだ油断は出来ないな。


「キャッ!?」


「カグヤ!!どうした!?」


 俺は振り向き、驚愕する。


 俺の目に映ったのは……。


 カグヤを片腕の中に押さえ込み、ナイフを突きつけているナイルの姿だった……。

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