カグヤは素直になれない~カグヤ視点~

 クロウは凄い。


 それに……カ、カッコイイ……。


 商人と交渉をして食糧や水を調達したり、情報屋とやりとりしたり……。


 風呂がある村を見つけてくれて、ナイトのように守ってくれたり……。


 戦えば、まさしく一騎当千の力を発揮し、全てを蹴散らしたり……。


 おかげで、私は何もすることなく、お父様やエリゼと再会することができた。


 私は、ちっとも役に立てない……私は、クロウのために何ができるのだろう?




 屋敷についてからも、クロウは凄かった。


 前は、ボコボコにされていたエリゼと互角以上になったり。


 お父様とも、対等に話をしていたり。


 私はカッコいいな、凄いなと思いつつも、中々態度に出せない……。


 全然可愛くない……もう、自分が嫌!!


 でもそんな私に、クロウはずっと可愛いとか言ってくれる……。


 その度に、私がドキドキしていることなんか知りもしないで……。


 でも、いつも嬉しくて飛び跳ねたい気持ちになる。


 だって……ずっと、好きだったもの。


 私だって……カッコいいとか、その……好きとか言いたいもの。







 素直になれない私は、お風呂で相談をすることにする。


「ねえ、エリゼ」


「お嬢様、いかがなさいましたか?痒いところがございますか?」


「ううん、違うの。あ、あのね……クロウが好きなの……」


「やはり、殺すか」


「え?だ、ダメよ!」


「……仕方ありませんね、我慢しましょう。あのクソ皇太子よりは、幾分かマシですし」


「ホッ……でね、好きなのに……恥ずかしくて言えないの……」


「やはり、殺しますね」


「だからダメだってば!」


「グヌヌ……!クロウが憎い……!」


「……相談相手を間違えたかしら?でも、エリゼが1番信頼できるし……」


「私が1番………!ここは、引くとしますか。いえ、お嬢様。もう、大丈夫です。それで、どうなさりたいのですか?」


「好きって言うのは、難易度が高いの……それ以外で、どうしたら気持ちが伝わるかしら?

 あと、すっごく感謝しているのに、ありがとうとしか言えないの……」


「まあ、クロウはお嬢様を溺愛していますから。ありがとうとさえ言っておけば、馬車馬のように働くと思いますが。

 ……そういう話ではないわけですね」


「にゃい!?で、溺愛!?」


「アレ?気づいていません?お嬢様を、とても愛おしそうに見ていましたよ……当時と変わらずに。まあ、クロウが上手く隠しているのでしょう。お嬢様が、気を遣わないように。

 ……悔しいですが、中々の男になりましたね」


「えぇー!!そ、そうなの!?わ、私、えっと、その……私も大好きなの……」


「まあ、言わなくてよろしいかと。多分アイツ……すぐにでもお嬢様を襲ってしまうでしょうから」


「お、襲う!?そ、それってそういう意味よね……?」


「ええ、そういう意味です」


「はぅ……!そ、それは、困るわ!いや、嫌じゃないけど、まだ、早いというか……」


「その照れ顔見せただけで、猛獣と化しますね」


「ど、どうすればいいの!?」


「自然体で良いと思いますよ?お嬢様の余裕ができたら、少しずつ伝えていけばよろしいかと。そして、クロウはお嬢様に無理強いはしません。もし、襲ってきたなら、引っ叩けば正気に戻るはずです」


「……そうなのかしら?そんなので良いのかしら?クロウは、私のために頑張ってくれているのに……」


「クロウはそんなことは思っていないでしょうね。私も、そうですから。ただ、どうしてもとおっしゃるのなら……できる範囲でいいので、支えてあげればよろしいかと」


「支える……?でも、私は戦えないし……」


「何も戦う事だけが、支えることではありません。料理を作ったり、疲れを癒したり、掃除をしたり、支える方法は様々です」


「なるほど……言われてみれば……あれ?でも、そのためには一緒に暮らさないと……」


「あれ?一緒に暮らさないのですか?だって、見ず知らずの土地で2人きりですよ?いくら敵対感情が少ないとはいえ、この国の女性の1人暮らしは危ないかと。それに、お金の面でもですね」


「それは……言えているわね。で、でも一緒にって……は、恥ずかしい……私、寝顔とか絶対可愛くないもの……」


「大丈夫です、可愛いですから。それに、何も一緒に寝るとは言っていませんしね」


「そ、それもそうね!よ、よーし!私、頑張ってみるわ!」


 その後、お風呂を済ませて廊下に出ると、クロウがいた。


 クロウも、風呂上がりのようだった。


 上半身は裸の状態で、タオルを肩にかけている。


 凄い……かっこいい……腹筋が割れて綺麗……。


 わ、私は、アレに襲われちゃうのかしら!?


 ど、どうしよう?抵抗できなかったら……。


 だって、こんなにドキドキするもの……。


 私は深呼吸をして、平静を装って声をかける。


 そうしたら、抱きしめたいって……!


 愛らしいって……!


 私しか目に入らないって……!


 私は嬉しさと恥ずかしさで、どうにかなりそうだった……!


 身体が熱い……お、お風呂のせいよね!?


 さっき覚悟を決めたのに、私は逃げるようにその場を去ってしまった……!


 もうーー!!クロウのバカーー!!ドキドキしすぎて死んでしまうわーー!!


 ……でも1番バカなのは、素直になれない私だわ……。


 ごめんなさい、クロウ。


 もう少しだけ待っててね!

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