その131 自分事ながら楽しみな新アニメな気分
「地獄にお似合いな顔だから怖がられているのかと思っていたが」
ニムエさんに避けられているお兄様は普通に何処か寂しげだった。
可哀そうなお兄様……イケメン過ぎるばかりに。
「お兄様のお顔は鬼は鬼でもイケ鬼ですので!」
「初めて聞く概念だな」
言われてみればオタク界隈以外で鬼がイケメンなことは皆無な気がする。
強調の為に付く『鬼可愛い』などの言葉も、なんかそのまま受け取られて「鬼が可愛いことあるか???」とか言われそうなくらいだけど、その時は「鬼が可愛いことはあります!!!」と返すしかないか。
「さて、これまでの流れを説明したいのだが、それを知ると『全てを洗い流す泉』の代償も知ってしまいかねないんだったか」
「う~ん、もういいんじゃないかしら~? 今は『記憶を失っている間の記憶』がないけれど~、なんとなく可哀そうだし~、しばらく経ったらその間の記憶も戻ってくるようにしているわ~」
「えっ、私、記憶がなくなってたんですか!?」
「ラウラ、俺から説明しよう。お前はイブンの危機において──」
そうしてお兄様にこれまでの流れを聞く私だが、その中で衝撃の真実が明らかになる。
私……超すごい魔法使いになってたんですか!?
ナナっさんを超すようなそんな超超超すごい魔法使いに!?
えーーーーーーーーーーーーーーー! 私も魔法使いたいなーーーーーーーーーーー!
記憶の無い私だけずるいよー!
生涯一度も魔法が使えず、他人の使う魔法を羨望の眼差しで見ていた私なので、魔法を欲する気持ちは人一倍強いのだった。
だと言うのに、私がそんな大魔法使いの身分を捨ててまで記憶を取り戻そうと必死になったのはなんだか不思議な話だった。
せっかく、夢を掴んでいたのに。
「勿体ないことをしましたね、私は」
「まあ、確かに強大な力だった。世界を地獄に変えられるほど」
「ああ、これ私がしたんですよね……ご、ごめんなさいニムエさん!」
「いいのよ~、後で戻しておくから~」
ニコニコとなんだかすっごい寛大なニムエさんだった。
こんな優しくて心が広い人の世界を何故私は地獄に……ざ、罪悪感が。
明らかにやりすぎだぞ! ラウラ・メーリアン!
「それで代償を知らなければ再度『全てを洗い流す泉』を活用することも可能だったんだが、今、お前に教えたのでそれも不可能になった」
「なるほど忘れていることすら忘れるので、代償も知らずに済む予定だったのですね…………何で教えちゃったんですか!!!!! いつでもスーパーマンになれるチャンスだったのに!!!!!」
「もう『全てを洗い流す泉』は封印しようと思って~、それにラウラちゃんのこと超好きになって分かったけど~、一緒にいた日々を忘れられるのは悲しいわ~」
「ちょ、超好き!?」
悲しげに語るニムエさんの目にはうっすらと涙が溢れている。
あれ? 前々からそこそこ高かったニムエさんの好感度が降り切れてないか?
むしろ地獄を生み出したくらいなので好感度が下がることはあっても上がることはないと思うのだけど……い、一体、私の失った記憶の中で何があったの?
「一緒にタイマン張って殴り合った仲じゃないの~」
「殴り合っていたのですか!?」
「それも忘れられているのが悲しいのよね~…………だから記憶も戻すわ~、多分、一か月ほどで戻ってくると思う~」
「なんだか自分のことながら、一か月後が楽しみになってきました」
一体、記憶を失っている間に私はどんなことしていたのか、非常に興味がある。
記憶喪失ってオタクの憧れだし、それを疑似的にも体験できるなんて、なんだか得した気分かも。
「……ヘンリーはマズいことになったかもしれんな」
「えっ、ヘンリーがどうしたのエクシュ?」
意味深に呟くエクシュの声色は何故だか重苦しかった。
ヘンリーがマズいことになるなんて、なかなかないと思うけれどな。
「いや、剣がでしゃばるモノでもないのでな、一か月後までは秘密としよう。頑張れヘンリー」
「本当に何があったの!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます