第48話 きせき
テレビドラマの『アンサングシンデレラ』をとくに大切に観ているカヨさん。
先日は、ひとり暮らしの高齢患者を「あなたは孤独ではありませんよ。すべてをわかっていてくださるかかりつけのお医者さんがいてくださるじゃありませんか」と励ます若いヒロインに、またしても涙、涙、涙……でした。
3年前の夏、とつぜん呼吸の仕方がわからなくなり、毎晩緊急外来へ駆け込み、そのつど「気のせい」と言われ、でも、動悸と息苦しさが堪えがたく、一刻も早く死んでしまいたいとそればかり考えているとき、藁にも縋る思いでネットで探した心療内科病院に飛びこみ、親身に話を聞いてくださる主治医に巡り会った……。
その夜をさかいに悪夢の底から立ち直り、ネット小説、俳句、読書、筋トレ、歌、手縫い、手編みと、自分らしい生活を取りもどすことができたカヨさん。
たぶんに心因性もあったのでしょう。
緊急外来で処方された薬は効果がなかったのに、心療内科の先生処方の薬はただの1回で効いた……その事実を思い出すたび、奇跡という言葉が浮かんできます。
それに、もうひとつ。
ご自身には何の得もないのに、見ず知らずの初心者をきびしく、やさしく、親切にご指導くださった俳句の先輩方との出会いにも奇跡を感じているカヨさんです。
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