第349話 12月6日(特別なプレゼントって、何……?)
朝礼が始まる前の騒がしい教室へ入ってすぐ、茉莉と挨拶を交わす。
「お、新しいの買ったんだ」
親友は首に巻いたマフラーを見るなり、「似合ってるよ」と笑った。
けれど――、
「ん。ありがと……」
――その笑顔に仏頂面で返してしまう。
「……何かあった?」
声色の変わった茉莉へ順を追って話そうとした時――、
「……実は、」
「おはよう、二人とも。あれ? 智奈美、そのマフラーいいね。ちょっと早いクリスマスプレゼントだったりする?」
――横から現れた夕陽が、いきなり核心を突いてしまった。
◆
「本当にクリスマスのプレゼントだとは思わなくて……」
申し訳なさそうに視線を伏せる夕陽に、茉莉が「まだ、そうと決まった訳じゃないでしょ」と言う。
直後、夕陽の口から「あ、そっか」なんて声が漏れた。
「プレゼントするって言われただけだもんね。大丈夫、きっと、当日にももらえるわよ」
「いや、コレ、別の何かが欲しかったって話じゃないから」
そして――、
「むしろ、私はクリスマスプレゼントなんていらないくらい」
――本音を告げた直後、二人の頭上へ疑問符が浮かんだ。
「…………普通、クリスマスプレゼントってどういう相手に渡す?」
訊ねてすぐ夕陽が「恋人じゃない? 好きな人」と答える。
正解だと思った。
でも、私には当てはまらない。
だから、「……他には?」と、続けた。
すると、茉莉が「あー……はいはい」なんて呆れたように言葉を紡ぐ。
「子どもって言いたい訳ね」
頷くと、夕陽からも納得したような反応が返ってきた。
「別に、子ども扱いされるのは平気だったの。最近は、少しずつそれでも良いって思えてた。でも、コレ――プレゼントするって言われた時に、去年のクリスマスを思い出してから……なんか、子どもだからって理由でプレゼントをもらってたら、ずっとこのままなんじゃないかって考えるようになっていって……」
唇を結んだ途端、三人の間に沈黙が訪れる。
でも、それは長く続かなかった。
「だったら、クリスマスプレゼントがいらないなんてのは嘘ね」
「え?」
夕陽の言葉で、閉じていた唇が開く。
「智奈美、間違えちゃだめ。あんたはプレゼントがいらないんじゃないの。本当は欲しいのよ、特別な理由で贈ってもらう、とびきりのプレゼントがっ!」
彼女の決めつけを即座に否定できなかったのは――それが本音だったからか。
私は、何か反論しようにも、
「なっ、えっ……」
恥ずかしくて、上手く話すことが出来なくなっていた。
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