第157話 5月28日(まさか私がこんなことを訊くなんて……)/<急がば回れ←白雪姫>
「あの……誘ってもらえるのは、すっごく嬉しいんですが――急にどうしたんです?」
昨日、秋に
楠との約束を断ってでも訊いておきたいことがあったのだ。
「うん。それなんだけど……誰かと付き合うって、どんな感じ?」
周りに聞こえないよう小声で話す私を……秋は、きょとんと首を傾げながら見つめる。
「もしかして……今日は、その話をしたくて?」
訊ね返す秋の頭上には疑問符が浮かんで見えた。
けれど、
「そう。実は、私……今、同級生から告白されそうになってて。けど、こういう経験がないから、何かやるたびに裏目に出ると言うか――友達にも呆れられて」
要領を得ないまま話す私に、秋は「つまり」と前置き、
「
欲しかった言葉をくれた。
◆
ちーちゃん先輩は普段、凛としている。
姿勢が良くて、はじめて見た時は女優さんかと思った。
あと、少し近寄りがたいなとも……。
でも、先輩はすごく優しかった。
というか、年下にだけ異様にあまい。
これはたぶんだけれど……年上の誰かから大切に、優しくされていたことがあって――自分がやってもらってきたことを
かっこよくて、優しい……わたしの憧れの先輩。
なのに、部活をやめてしまって――ようやくまた
と、思っていた筈なのに――、
「……それで、誕生日を誰からも祝ってもらわないことにしたんですか?」
――恋愛面があまりにポンコツ過ぎて、戸惑ってしまう。
それに……楠先輩かぁ。
以前、先輩達と一緒にうちの店へ来てくれた人だ。
部活に対しても真剣で、先輩が運動するきっかけを作った人らしい。
もしかしたら、二人が付き合ったらいい方向に転がるかもしれない。
なんてことを考えた途端、
「いっそ、付き合ってしまえばいいのではないでしょうか?」
思わず、そんな言葉が口を衝く。
「そ、そう?」
「はい。振るかも、振られるかもって考えるから変に先延ばしにしたいと思うんです。いっそお試しで付き合って、その間はデートもキスもなし! それで大会が終わってから改めて交際を続けるかどうかを考えた方がモヤモヤしないと思います」
この時、ちーちゃん先輩は……今まで見たことがないくらい、可愛らしい表情をしていた。
「……なんかすごいね。秋は」
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