機械仕掛けの滅びの美学

作者 丹寧

機械と共に生きる姫君の儚い抗いと淡い恋の物語

  • ★★★ Excellent!!!

 機械仕掛けの時計を水や火のような動力なしに動かしてしまう力を持つ技師たち。
 王国で最後のその特殊な「動力」を持つ技師となったヤンターは、他国の蒸気機関の登場を冷静に見据え、自らの力と運命に向き合い、やがて一つの決断を下す——。

 はじめからおわりまで、美しいのにどこか物哀しい機械と凛々しいヤンターの描写が鮮やかに目に浮かぶようでした。
 そのタイトルにある通り「滅びの美学」なのかもしれませんが、閉じられた世界でたったひとつ許された彼女のその選択が、あまりにも切なく胸を打ちます。

 彼は彼女のその想いに気づいていたのでしょうか。
 気づいていなかったとしたら、おそらく彼は生涯このことを忘れ得なかっただろうし、もしそうでなかったのだとしたら、あまりに彼女にとって残酷に過ぎる……。

 そんな風に、登場人物たちのそれぞれの想いについて、悲しいけれど、何度も読み返してはその心情を考えたくなる——そんな物語でした。

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★★★ Excellent!!!

王都の天文時計が止まり、二つの針が重なったままの数時間。
その時計を動かしたオタカル王子も、彼と同じ能力を持つ琥珀姫も、「勤しむべき務め」のために生きています。
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