機械仕掛けの滅びの美学

作者 丹寧

185

62人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

「動力」と呼ばれる特別な力で機械を動かしていた国の物語。
動力を使える人間は、ヤンターと呼ばれる王女ひとりになってしまった。
王はなんとしても動力を残そうと画策するが、そこに王女の意思はなく。
時代は、動力とは違う新たなエネルギーを必要とし始めていた…。

滅びゆこうとする古の財産と、ともに朽ちようとする王女の悲哀。
タイトルどおりの美しい世界が、一万字足らずの短編の中に凝縮されています。
魔法と機械が共存する異国の世界描写も美しく、じっくりと読書に浸れる物語です。

★★★ Excellent!!!

中世に近い欧風都市が舞台のファンタジー短編。冒頭の童話のような語り口から、するすると物語の世界に引き込まれていく。
美しい文章の中で錯綜する人それぞれの思惑。最終話を読んだ時、琥珀姫にとっての恋心の尊さについて考えさせられた。

★★★ Excellent!!!

『機械への動力付与』という稀な能力を持った者たちが、身の安全確保という名目で国のために『籠の鳥』として扱われる、もの悲しいシーンから始まり、ぐっと惹きつけられます。

蒸気機関という革命から、傾国の予感に焦る王。
能力を持って生まれてしまったが故に閉じ込められ、ただ黙々と膨大な務めを果たす琥珀姫。
権力を維持したい王に翻弄される国民達。

時計が止まるカラクリと結末のやるせなさの関係が秀逸です。
王に歯車として扱われながらも、最期まで『人』として生きた娘の人生は、まさしく『滅びの美学』と冠するに相応しい物語でした。

★★★ Excellent!!!

「時計に動力を吹き込む」という能力を生まれ持ち、ゆえに国の威信を保つための道具として幽閉同然の生活を強いられる『琥珀姫(ヤンター)』。
彼女はある時、自分の侍医となった青年に惹かれていることに気付いて……

丁寧に作り込まれた世界観が、この物語にたった1万字とは思えない深みと奥行きを与えています。
しかし何より心を揺さぶるのは、淡々と綴られる情景から浮かび上がってくる、ヤンターの情緒です。

生まれついての宿命に縛られたヤンターは、何を選んだのか。
与えられた役割よりも、自らの命よりも、何を守りたかったのか。
哀しくも美しい物語でした。

★★★ Excellent!!!

機械仕掛けに「動力」を与えることができる稀有な力を持って生まれた姫。
その力ゆえに歯車として扱われつつも、本来あるべき技術の進化、自らの否定を内包した悲しいお話。
ですが、その自らの否定、存在価値の消失は「とある理由」によって発露するもので……

精巧な筆致によって情景あふれる世界観の描写は、読み手のイマジネーションを刺激し、メカニカルなファンタジー世界を思い描かせてくれます。
その世界観に生きる登場人物たちに課せられた使命、そして思いが最後にまとまっていて……

何度も読み返したくなる、おすすめの短編作です。

★★★ Excellent!!!

ずっと歯車の音が聞こえてくるからこそ、逆に静けさを感じる世界と、蒸気機関の登場によって傾いていく国の翳りで、どこか閑寂とした雰囲気が醸し出されている作品です。

主人公である琥珀姫ことヤンターは、そんな斜陽の国の王女。外出を許されない籠の鳥でありながら、将来を冷静に見据える彼女の凛々しくも儚い姿が美しく、だからこそ、後半の痛ましさや切なさに胸を打たれます。オルゴールの奏でる音色がだんだんゆっくりになっていき、最後には曲の途中で止まってしまった時のような物寂しさ、物悲しさを深く感じる作品でした。

また、タイトルにもあるように「滅びの美学」という言葉がふさわしい作品なのですが、ちらりと見える魅力的な機械の動きの描写にも注目してほしいです。

★★★ Excellent!!!

王都の天文時計が止まり、二つの針が重なったままの数時間。
その時計を動かしたオタカル王子も、彼と同じ能力を持つ琥珀姫も、「勤しむべき務め」のために生きています。
そして、広い世界を知らぬまま儚い生を終える運命。
その運命の針を籠の鳥の姫は動かすことができるのでしょうか。

意志の宿る生命を持つことの強さ。
姫自身の心を貫く美しさ。
『機械仕掛けの滅びの美学』というタイトルに深く納得致しました。
涙をぬぐう準備をして、迎える結末に目を瞠りましょう。

★★★ Excellent!!!

 機械仕掛けの時計を水や火のような動力なしに動かしてしまう力を持つ技師たち。
 王国で最後のその特殊な「動力」を持つ技師となったヤンターは、他国の蒸気機関の登場を冷静に見据え、自らの力と運命に向き合い、やがて一つの決断を下す——。

 はじめからおわりまで、美しいのにどこか物哀しい機械と凛々しいヤンターの描写が鮮やかに目に浮かぶようでした。
 そのタイトルにある通り「滅びの美学」なのかもしれませんが、閉じられた世界でたったひとつ許された彼女のその選択が、あまりにも切なく胸を打ちます。

 彼は彼女のその想いに気づいていたのでしょうか。
 気づいていなかったとしたら、おそらく彼は生涯このことを忘れ得なかっただろうし、もしそうでなかったのだとしたら、あまりに彼女にとって残酷に過ぎる……。

 そんな風に、登場人物たちのそれぞれの想いについて、悲しいけれど、何度も読み返してはその心情を考えたくなる——そんな物語でした。

★★★ Excellent!!!

時代背景、産業発展、浅はかな王。

それらの柵に囚われた動力技師ーーヤンター(ヒロイン)。


きっと、この方法しかなかった。自らの想いを貫き通すための、唯一の方法だった。美しく、儚い、結末。

何か一つが違っていれば……。
僕はそんな思いを抱かざるを得ませんでした。胸の詰まる短編作品でした。

★★★ Excellent!!!

ある種、独特の世界観と雰囲気ではじまり、演劇の様に登場人物たちの台詞で物語が進んでいきます。

ですが端的な地の文で飾られ彩られた情景は、台詞以上に物語に引き込んでくれます。

そして読み終わってから最後のシーンを振り返ると、胸の奥がギュッと締め付けられる。

こんなに練られてまとまっていて感情を動かされる短編は初めてかもしれません。