その3 夜の電車


夜の電車は満員で

窓ガラスには

混んだ車内が映っていた


ナチスドイツが

ユダヤ人をガス室に送りこんだ列車は

超満員で

裸にされ

押しつけられた人々のなかには

現実を忘れるために

セックスをしている人もいたという


隣に

娘が立っていたが

背の低い彼女は

唇を結んで

顔をあげない

俯いた表情の固さは

他者との交渉を拒否している


ガス室に向かった列車の中には

こんな表情をした娘が

多かったに違いない


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る