14
風の音に負けぬよう、少佐が大声で皆を鼓舞する。それに促され七人はのろのろと歩きだした。
確かに風は恐ろしく激しく、皆をあの蒼黒い奈落の様な空へ吹き飛ばそうと容赦なく吹きつけてくるが、こちらも負けじと氷の地面に
ここでも一時間かけて頂上直下にたどり着く、わたしは送信機を背負うケジャさんと発電機を背負うペンチャさんにそこで機材を下すように指示。梱包を解き設置を始めた。
カク教授とオウオミ先生、そして私や開発班皆の努力の結晶。いまその真価がためされる。
あの飛行機や飛行船の発動機の様な発電機がまず最初に据えられ、何本もの綱や
そこから導線を同じく固定された送信機につなぐ。それと同時に少佐が
発電機を起動させてみる。筒の中の回転翼がものすごい勢いで回り出し発電量を示す計器を見ると最大発電量をすでに叩きだしていた。
ここまでは問題なし。
あとは、撮影機だ。
少佐が私を見つめて言った。
「お前さんがあそこに登って撮影機を据え付けな、大尉。これはお前さんの仕事だからな」
皆を見渡す。誰もが頷く。
だったら、行くか!
撮影機を背負って岩の台に攀じ登る。思ったほど高く手足のすべてを使い我が身を持ち上げ攀じ登る。
下から腰の安全帯に電源線と出力線を括り付けた少佐が続き、綱や
やがて、右の手が虚空を掴んだ。ここから先、岩も氷も雪も無い。
上半身を岩の台の上に預け、撮影機の重さに押しつぶされつつ下半身を引っ張り上げる。
全身が岩の上に登り切り、顔を上げると、先ず見えたのはもはや宇宙と言っても差し支えないほどの黒さの空に数本の筋雲、下には別の山の真っ白い山容がどっしりと腰を据え、その先へのびやかに稜線を続かせている。
そう、今いる場所よりもう高い場所は無い。
ここがオルコワリャリョ、七四九七.五
私はついにここまでやって来た。そしてこの世界に住むすべての人々で初めてこの場所にたどり着いた。
けど、感慨よりまず頭に浮かんだのは『撮影機を固定しなきゃ』
本体を引っ張り出していると少佐が三脚を組み立て岩肌に鉄杭で固定している最中だった。
撮影機を三脚に据え付け、電源線と出力線を繋ぎ起動させる。少佐はこの間、山頂を駆け下り送信機に走る。
接眼
撮影機は問題なし。あとは送信機だ。
携帯無線機を取り出し、インティワシ連峰の内の一座、オルコルミ峰にある受信施設を呼び出した「ミミズク、ミミズク、こちらハゲワシ、送れ」
すぐさま雑音交じりの返事が返って来た「ハゲワシ、ハゲワシ、こちらミミズク、感度良好、送れ」ノワル曹長の懐かしい声だ。
「こちらハゲワシ、ただいまより画像を送る。確認でき次第報告せよ、以上」『こちらミミズク、了解』
撮影機をインティワシ連峰に向け、その最高峰であるインティワシの頂に焦点を合わせる。嫋やかな山容が
「九時方向に一個分隊!山岳猟兵だ、奴らもここまできたぞ」ワイナ・ウリさんの声に接眼
シュタウナウ大佐率いる山岳猟兵の精鋭。
時間が無い。
ワイナ・ウリさんがインティキルの三人を指揮して防御態勢を取る。お互いが見える位置なのに銃撃してこないと言う事は、向うも火器を装備していないと言う事だ。
少佐は賭けに勝った。
けど、人数は向うの方が倍。白兵戦に成れば圧倒的に敵が有利になる。
今は兎も角撮影に集中しよう。
再び接眼
今度は少佐が自分に代わって発電機の方に移ったシスルに向かって怒鳴り声「出力が出ねぇ!発電機どうなってる!?」沈黙の後「方向を変えて風を多く受けるようにした!どうだ!?」との甲高いシスルの返事。
「よっしゃ!来た来た来た!電波も安定してきやがった!大尉!イケてるはずだ!」
接眼
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