11
「落ちた!」誰もがそう思い六人全員が縁目掛け駆け出す。
やっぱりやっぱり殴ってでも止めるべきだった。私はまた妹を大事な妹を失った。
今度は自分のせいで!
叫び出しそうになりながら
そこには、何も無かった。
自分の横をまっすぐ対岸に延びる綱の先を目で追うと、向う側の氷の壁に取り付いたシスルの姿。
「姉っちゃ!やった!やったぞ姉っちゃ!」とラチャコ君が吠えまくり「シスル、やっぱ前はすげぇよ、本物だよ」と少佐は楽しそうに笑いながらつぶやく。残りの四人も互いに抱き合い歓声をあげてはしゃぎまわる。七千
そんな対岸の騒ぎをしり目に、彼女は右手のクッラと左手の
上がり切ると今度は
手筈通り
氷の塊をシスルの待つ反対側に放り投げると、シスルはそれを回収し細引きを引っ張って残りの綱を手繰り寄せる。
これを最初の綱の真下に固定すると恐ろしく不安定ながら人が何とか渡れる橋が完成した。
最初に撮影機を背負った少佐が渡り安全を確かめる。渡り切ると少佐と自分の荷物を背中とお腹に括り付けたラチャコ君が渡り、その次に発電機を背負った私が続く。
いざという時頼りになるのは腰の安全帯と
時々吹き渡る突風に容赦なく体が煽られぶらぶら揺れる。そんな時は風が止むまで踏ん張るしかない。
永遠にも思える時間をかけて反対側に渡り切ると、シスルがまた私に抱き着て来て、今度は彼女の方が私の羽毛服の頭巾を剥いで私の二股角を撫ではじめた。私はしゃがんで撫でられるがままになる。
そうこうしている間に全員が渡り切り、陽が落ちる前に
オルコワリャリョの頂は確実に迫っている。
その日はこの場所で野営することにした。
天幕を張り終えた頃、インティキルの一人が山岳猟兵が登ってきている尾根の辺りで何か光ったと言い出した。
少佐が単眼鏡で確認すると。
「こりゃ、発光信号だな。何々?『我ラ山岳猟兵一同、
私たちの行動を称賛しながら、自分たちが先に頂を征すると宣言する。慇懃にして豪胆。名前からして貴族出身なのであろうシュタウナウ大佐の気品と武勇に優れた人柄がにじみ出る通信だ。
憎むべき敵なんだろうけど、どこか尊敬してしまう所もある。ラチャコ君には口が裂けても言えないけどね。
自分の装備から懐中電灯を取り出した少佐は、山岳猟兵の居る方向にそれを向けると。
「こりゃ、返信して差し上げなきゃ武門の名折れってもんヨ『貴殿ヨリノ賞賛、当方深ク感服仕リ候、コノ礼ニ報イルニ足ルハ万難ヲバ排シ、一足御先ニオルコワリャリョノニ登頂セシメ、貴殿ラヲ御出迎エスルニ外ニ無キト確信ヲ得タリ。当方ヨリモ貴殿ラノヨリ一層ノ健闘ヲ祈ル、禿鷹挺身隊隊長シィーラ・ルジャ・シャルマ、同副隊長オタケベ・ノ・ライドウ』」
って、なんで私が隊長?なんで私が指し出し人?!少佐!今すぐやり直して下さい!
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