秘匿恋愛

おむ

第1話 第一図書室

 「昨日、第一図書室で本が勝手に倒れたらしいぜ」


 「マジ?こっわ」


 隣の男学生二人が話し合う。

 話題は連鎖していって、教室中の生徒全員が第一図書室の数々の怪奇現象の体験談を打ち明ける流れまで発展していった。


 うちの学校にも七不思議が存在する。

 大抵は地蔵が動くだの、トイレの少女がなんだの、いろんな場所で摩訶不思議な現象が起きるのが一般的だと思うが、うちの学校はちょっと違う。

 

 七不思議のすべてが第一図書室で起こる七不思議なのだ。


 一、図書室で弁当食べたら、頭が痛くなる。


 二、図書室でヒソヒソ話をしていると、背中が寒くなる。


 三、本を延滞すると、時折「シテ…、シテ…」と聞こえる。


 四、夜な夜な本が動く。


 五、閉鎖されて掃除していないのに埃が全くない。


 六、しくしくと泣く声が聞こえる。


 七、誰かと話す声が聞こえる。


 すべて図書館絡みで、うちの学校は他校から図書館学校という異名が付いているらしい。

 七不思議すべてを体験すると死ぬらしい。めっちゃ怖い。いまんとこ死者〇人だけど。

 変な噂が立ちすぎたせいで、現在第一図書室は閉鎖されて新しく第二図書室が作られた。

 

 「お前ら、うるさいぞ。席につけー、ホームルーム始めっぞー」


 教室に担任の松本が入ってきて、生徒たちを席に座らせる。

 だるそうな声で話す松本の話を、俺は聞いている素振りで聞く。本当は全く聞いていない。もう最初の文字すら何だったのか、当てられたら間違える自信があるくらいだ。


 「んじゃ、今日はこれで終わりだー。馬場、日誌書いたら職員室に見せにこいよ」


 「――――」


 「おい、馬場聞いてるのか」


 「早く馬場返事しろよ」と思った瞬間に思い出す。



 馬 場 は 俺 だ っ た 。



 あまりにも意識が別のとこに行っていたせいで、自分の名前すら忘れていた。


 「あ、はいッ!」


 人生で二番目くらいの大きさで返事したと思う。ちなみに一番は、赤ちゃんの時の『おぎゃぁあぁぁあぁぁああ』だ。親があんときのお前はうるさかったと言ってくる。うざい。


 ホームルームを終えて、生徒たちは各々友達のとこへ集まって「今日どうする?」や「部活先行ってて」の青春の光景を見せられる。

 別に羨ましくなんかない。一か月前の僕なら妬みまくったかもしれないが、今は違う。

 荷物を抱えて、リア充の横を早々に通り抜けて職員室に向かわずに三階へと向かう。


 三階には噂の図書室があるせいか、夕方のこの時間は人がまったくいない。

 自分の上履きと床が接触するたび発する音だけが響き渡り、独特な雰囲気を漂わせる。


 第一図書室の入り口に到着した。案の定、入り口のドアに付けられた小窓の中は暗くて、人がいる気配はない。

 『いつものように』ドアを開けようとする。開かない、閉鎖されているから当然だ。

 しかし、時間差でカチャッと鍵が開く音が鮮明に聞こえ、勝手にドアが開いていく。


 中から現れたのは黒髪ロングの少女で、長い髪を耳元で押さえて少年を優しい眼差しで見つめる。


 「馬場君、今日はどんな物語おはなしを聞きたい?」


 俺、馬場はこの幽霊かのじょ恋愛おつきあいしている。

 

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